街が絶望に覆われてゆく。このままでは壊滅は時間の問題だ。人々も生きる気力を失くし、ただ呆然と滅びゆく街を見送っている。「それ!消防隊出動!」勇気ある消防隊は望みを捨てない。燃え広がる絶望に向けて超強力な消火剤を噴射する。「僕たちは絶望による被害を少しでも小さくするために活動しているんだ。この世を絶望一色にしないために。」消防隊の懸命な活動により火は約3時間半後に鎮火した。「今回は何とかこれで収まったけど、それでも被害はかなり大きい。絶望という物がこの世から消え去ってくれるのが一番だよ。これは究極の理想論だけど……」絶望というのは「街」単位で起こる訳ではなく、「個人」単位としても日常的に起こっている。むしろ、こちらの方が多いだろう。「希望」に満ちて、パッと光が差し込んだ様に「ハッピー」という言葉でしか表現できない時もあれば、どこからともなくチラチラと「絶望の火影(ほかげ)」が顔を覗かせ、瞬時に心の中を覆い尽くしてしまう時もある。この世は対極。「希望」あれば「絶望」あり。「絶望」を経験すると「希望」のありがたさが分かる。「人間ってすぐにネガティブになるからね。ちょっと気を抜くとネガティブに足を取られる。さっきまで希望があってウキウキしてて、スキップしてたのが、ほんのちょっとの事でどん底に落ちて、どんよりしだして、絶望の火影が現れる。」小火(ぼや)で消し止める事が出来ればいいが、それが出来ないと「絶望の火影」が揺らめき、ついには「絶望の火柱(ひばしら)」まで立ってしまう。「建物が絶望の火影に覆われたら何とか対処できる。でも、人の心がその状態になったらどうする事も出来ない……」消防隊は悔しそうに肩を落とした。

「笑顔が消える。すると空気が乾く。空気が乾くとそれを養分として絶望の火影が発生する。あなたの心と体は絶望に乗っ取られてしまう。消防隊がやってきて、必死に消火活動をするも絶望という炎はより一層激しく燃え広がる。燃え盛った炎には火柱が立つ。消防隊が水や消火剤をかけても、まさしく焼け石に水。この火を消すにはどうしたらいいの?光を当てたら逆効果。そうか!じゃあ、うんと湿り気を与えるしかないのか。空気が乾いているのなら、潤せばいいんだ。ここは一旦悲しみに暮れよう。世界中が涙に包まれたなら、大量の湿気で火柱も消える。泣き濡れた後には再生とい名の虹がかかり、希望が息を吹き返す。」今日もあなたに幸あれ。続く。