人里離れた山奥にあるスクラップ工場。ここでは強力な「電磁石」が大活躍していた。と、その中の一台の調子がおかしい。作業員は「あー、こいつもう寿命だな。新しいのと取り替えるか?」作業終了後、「電磁石」たちによる「お疲れ会」。「先輩、長い間お疲れ様でした!僕たちは先輩の働きぶりを見て、あぁ、自分たちも早くあんな風にバリバリ仕事したいって思ったんです。」「若いの、労ってくれてありがとよ。機械でも疲れるし、寿命ってのはちゃんとあるんだ。俺なんか働きすぎて金属疲労になっちまった。もう役立たず、用無しだ。老いぼれは去るのみだ。よっ、若い衆、後は任せたぞ!」「はい!今までありがとうございました!」世代交代。新旧のバトンタッチ。そんな電磁石たちのやり取りを見て、「普通の磁石」はボソッと「いいな……」と呟いた。引退した電磁石は「そうか?そんなに俺たちが羨ましいか?」と問いかけた。「だって、オジサンたちは一度に沢山の金属をくっつけるじゃないか。僕なんてほんのちょっとしかくっつけられない……」「電磁石ってのは力ずくだからな。電気の力使ってんだから。確かにいっぱいくっつける事できるけど、その代わりくっつけなくてもいい物までくっついたりするから、そいつを選り分けるのちょいと面倒だぞ。二度手間ってヤツだな。」「でもさ、そうは言ったってこうやってチマチマくっつけるより、ドカンとくっつけた方がカッコいいよ。」「その分電気代食うし、体(ボディー)にそれ相応の負荷もかかる。おかげで俺はボロボロだ。見た目と実情は食い違うんだよ。」「そうなのかなぁ……」「小さい磁石は一度に引き寄せる力は弱い。だがな、本当に引き寄せたい物だけを吸い寄せる。紛らわしい物はくっつかない。それだけ欲しい物を引き当てる確率も高くなる。」

「電磁石は電気の力を借りて強い磁力を発揮する。一度にくっつく量は多いけど、いらない物や邪魔な物まで付いてくる。ゴチャゴチャしててこんがらがる。弱磁石は一度にくっつく量は少ないけど、余分な物は付着しない。小さくて細かい物をくっつけたいのなら弱磁石の方が便利。磁石はS極とS極、N極とN極は絶対にくっつかない。この性質を利用して、嫌な物や人、必要ない物や人を徹底的に遠ざける事も出来る。これは弱磁石じゃなくて逆磁石。」今日もあなたに幸あれ。続く。