「働かないアリ」                                                       童話のアリとキリギリスの様にアリは働き者のイメージがある。アリのコロニーは女王アリ、兵隊アリ、働きアリ。常にせわしなく動き回っているのは働きアリだけだ。だがそんな働きアリたちをよく見ていると一定数何もせず、巣の片隅でじっとしている集団がある。試しにこの「働かないアリ」たちを取り除いてしばらくすると、それまで動き回っていたアリの中から動きを止めて先ほど取り除いたアリと同じ状態のアリが出てくる。いくら取り除いても結果は同じ。では何故常に一定数何もしないアリが存在するのか?それは「待機要員」だからだ。もし、他のアリに異常があった場合、その「待機要員」がすかさず出動してバックアップ出来る様にしているのだ。こうして予備を用意しておかないと万が一の時、巣が全滅してしまう。これを人間社会に置き換えてみよう。ある集団やグループがあったとして、そこに所属しているメンバーの能力には差がある。何でもこなせるエース的な存在も居れば、ナンバー2、平均的、そして足を引張りがちないわゆる「お荷物」とされている人。仮に点数を付けるとするならば、エース級が100点、以下75点、50点、15点といった具合か。傍目からこの構図を見ると15点のお荷物くんは邪魔な存在に思えてしまう。彼が居なければグループはもっと上手くスムーズに機能する……はず。しかしこれをアリで考えると、この15点の人を排除すると今度はその次に貢献度が低かった点数の人が抜けた15点の人の役割を担ってしまうのだ。なので、どんな集団やグループでも常に15点の人が居続ける事になる。確かに彼らは仕事が出来なかったり、要領が悪かったりと何かと他のメンバーに迷惑をかけたり、手間をとらせるかもしれない。その代わり明るいキャラクターでムードメーカーだったり、イジられキャラだったりで実務面以外の適性があるかもしれない。とても優しかったり、裏方や雑用を嫌がらずにやってくれるかもしれない。普段何もしない「働かないアリ」も非常事態の時には強い力を発揮する様に。いつもはみんなから馬鹿にされている様な人に助けてもらう事もあるのではないだろうか。「働かないアリ」が存在する意味。それはどんな物にも必ず役割がある事を教えてくれる。彼らが居る事で社会はバランスが取れているという事。今日もあなたに幸あれ。続く。