「滑走路」                                                                    杉村は出張先へ向かう為、空港のロビーで搭乗準備をしていた。するとアナウンスと電光掲示板で杉村が乗るはずだった便が目的地の空港の天候不良によりフライトが遅延するという知らせが。                                                                            「そっか、あっちの方天気が怪しいって言ってたもんな。」今の所最低3時間は遅れるとの事。「じゃあ、お茶でも飲むか。」空港内のラウンジで一息つく事にした。「先方に連絡入れといた方がいいな。」タイミング良くその先方から連絡が。向こうでも飛行機が飛ばないかもしれないという情報を知り、その場合のスケジュールの確認だった。「まぁ、天気の事はどうしようもないからな。」飛行機は約2時間遅れで空港を飛び立った。長い滑走路の上をタイヤを滑らせながら。雲の下には晴れや雨や曇りなどがある。しかし、雲の上にはそんな空模様はない。ただ空が広がっているだけ。私からあなたへ。「よく頑張って来たね。最後までやってこれたね。長い長い滑走路をずっと走って来たんだね。途中で諦める人も居たし、飽きて他の所へ行った人も居る。でも君はずっと、ずっとこの滑走路を走って来たんだ。じゃあそれは何のため?飛ぶためだよね?本当は分かってるんだ。君はもう充分にこの大空を飛べるって事を。じゃなきゃ今まで延々とくじけそうになりながら、辛い思いまでしてこんな長い滑走路を走り続けてなんか来ないよね。自分は飛べるって知ってるから、分かってるから勇気を振り絞って今ここに居るんだ。このまま飛べなかったらどうしよう。目の前にある海や川に突っ込んだらどうしよう。そういう不安や恐怖もあったと思うよ。でもね、君は自分の可能性を信じ続けていたんだ。絶対に飛べる。自分なら飛べるって……その長くて立派な翼は何のためについてるの?ただの飾り?だったら邪魔じゃない?空を自由に飛び回るためについてるんじゃないの?飛行機の機体が大きければ大きいほど助走が必要になるから、その分滑走路も長くなる。それと一緒で人間も胸に抱えた夢や希望が大きければ大きいほど、その分叶うまでに時間がかかるんだよ。滑走路っていうのはね、その飛行機がベストなタイミングで飛び立てる様に計算して作られてるんだ。一度飛び立ったら、あとは上昇気流に身を任せればいい。テイクオフ。フライト準備はいいか。テイクオフ。後戻り出来ないぞ。テイクオフ。いつも視界が良好とは限らないぞ。テイクオフ。安心して。飛行機は車よりずっと事故る可能性低いから。テイクオフ。一瞬の迷いを振り切って、空の上まで飛んでいけ。」今日もあなたに幸あれ。続く。