曲名:デラウェアヴァレーの祭典
原題:Delaware Valley Clebration
作曲:ダーレン・W・ジェンキンス(Darren W. Jenkins)
音源:ニュー・ウィンド・レパートリー2000「ダフニスとクロエ第二組曲」(ブレーン)
堤俊作指揮、大阪市音楽団
演奏時間:約4分
出版:Southern Music
吹奏楽という音楽形態は楽器編成や歴史的な背景から、祝典音楽やファンファーレ的な作品が多く作られています。
そりゃ「100周年記念式典」とかのオープニングを飾るのに、陰気な作品を取り上げても盛り上がらんですしね。
管弦楽のように貴族個人的な娯楽から、劇伴音楽まで幅広く用いられてきた形態ならば、様々な音楽が作られるでしょうけども。
しかるに華やかなファンファーレや序曲のような作品は、吹奏楽の表現力の真髄をみせるかっこうの舞台となります。
私個人としては重厚なマイナーコードの作品が大好きなのですけどね・・・。
華やかなサウンドで時間も短いめ、小編成で対応可能な作品を今回はご紹介。
音源CDに楽器編成の記載もあります。選曲のためにCDを聴かれる方々にはありがたいシステムです。
各セクションDiv.の部分は含まれておりますが、声部は少なくまとめられています。
25人もいれば十分対応可能なのではなかろうか、と思われます。
作曲のダーレン・W・ジェンキンスさんは高校の先生だそうで、ということはやはりスクールバンドを意識した作品というところでしょうか。
カンザス州北東部のデラウェアヴァレーリーグという、いわゆる学区の委嘱により合同バンドのために作られた作品との事。
カンザス州がどこかわからんかったので調べましたところ、アメリカの中西部の州でした。
少しピンときませんが、テキサスほどではないにしても砂漠とサボテンが多そうな地域です。
州最大の都市カンザスシティは、「オズの魔法使い」の主人公ドロシーの出身地。確かに砂漠だったでしょうか。
平易な楽譜でコンサートのオープニングには効果抜群な小品です。
金管セクションのファンファーレから曲がスタートしますが、音域もそれほど高くありません。
Tp.が幕を切って低音が受けて立つ、といういかにもな定番ファンファーレです。
そこに続くTp.による主題も、どことなくアメリカ西部のニオイを感じさせる爽快な旋律がなんとも印象的。
快活で軽快な旋律は、超大国としてのアメリカではなく、希望に満ちた若さ溢れる国、という側面を感じさせるなあ、と思います。
アメリカの表の顔というと裏はどんなコワイ顔やねん、という気もしますが、まさしく表側の顔です。
ゆっくりの部分に入りますと、やさしく温かいFl.・Ob.のソロが入ります。
ソロを支えるCl.の和声、そこに続くTp.ソロと金管中低音の和声など、温かみのある響きは聴く者の心に訴えるものがあります。
「急-緩-急」の「吹奏楽形式(私が勝手に命名)」となっておりますので、最初に登場した軽快な主題が再び登場してきます。
軽やかなリズムのままに短いコーダに入って曲が終了します。
急の部分の軽快でリズミカルな爽やかさと、緩の部分の叙情的な美しい旋律と和声の対比がこの作品の最大の魅力です。
同様の構造の作品は巷にたくさんありますが、この作品のように4分前後でその魅力を存分に引き出す作品というのは、以外に少ないものです。
和声構造もシンプルですが、それだけに気を付けて積み上げていかないと、魅力は伝わりません。
社会人バンドになると、このようなスクールバンド向けの作品は避けられてしまうってこと、結構ありませんか?
しかも小編成向けの作品となると・・・ちょっとプログラムに当選するのは難しいかもしれませんね。
敢えてこのようにシンプルな作品をプログラムに入れることで、演奏会のちょっとしたアクセントになるかと思います。
肉料理ばっかりでなくて、たまにはあっさり食べやすい和食もどうですか?という感じでしょうか。
30歳を過ぎたあたりから、肉料理より魚や野菜料理の方が好きになった私にはよくわかります。
同じくらいの世代の方なら、きっとこの感覚わかってもらえるだろうなあ。