みっちゃんの惑星 (70)
「ガイランドルはテレビコマーシャルを利用して嘘のメッセージを流し、エイリアンたちを烏丸山の頂上へおびき寄せようとしました。そしてシャドウメンに、エイリアンたちを救うために宇宙船がやって来て、全てのエイリアンがそこに集合することをわざと報告し、メンバーをそこへ集結させたのです。エイリアンたちを一掃する一大作戦ともなれば、シャドウメンも全総力を注いでことに当たります。ガイランドルは、自分の弱点を知りつくした、邪魔な存在―シャドウメンをそこでせん滅しようと目論んだのです。エイリアンたちはそのおとりでした」
「でも彼はエイリアンたちを元の姿に戻して、操ろうとしたんじゃ……」
「彼は私のディスクを奪い、自分が来た世界の歴史について知ってしまいました。だから自分の都合のいい歴史を作ろうと思いついたのです。それでエイリアンたちを操り、人間と戦争を起こして、世界を支配しようと決めたのです。しかしそれが彼の誤算だった」
「そうだったのか。それでラミー。コアアースが一つになったということは、地球は元の一つの世界に戻ったということだよね? そしてこの世界は、君がいた世界と、同じ歴史をたどることになるんだろうか?」
「それは私にも分かりません。ただ一つ言えることは、今私がこうして、無事に存在していられるということは、少なくともそれに近い、平和な未来が訪れるということです。聖典に記されていました。蜃気楼の壁を越えた二人のシント―そのいずれかは、悪しき歴史と共に消滅すると」
「消滅? そうか。そう言えば君は、俺がガイランドルに倒され、もうだめだと諦めかけた時、突然消えてしまった」
「そうです。あの時一瞬、ガイランドルが作り上げようとしていた歴史が、勝利しかけたのです。その世界では、きっと私は存在していなかったのでしょう。だから消滅してしまったのです。でもあなたは諦めずに戦い続けた。そして正しい歴史を創り上げてくれた。本当に危ない一瞬でした」
それを聞いて、私はとんでもないことに気づいてしまった。
だがそれが間違いであることを期待して、私は恐る恐るラミーに問いかけた。
「ラミー。君は今、蜃気楼の壁を越えた二人のシントと言ったよね? じゃあもう一人のシントとは?」
「そう。ガイランドルです」
私はその言葉を聞くと、再び倒れていたガイランドルの残骸に、恐る恐る目を向けた。
そして呟いた。
「ガイランドルは消滅していない」
その時だった。
突然、ガイランドルの両目が青く点滅し始めた。
「あっ」
私はそれを見て思わず叫んでいた。
と同時に、ガイランドルは両肘を地面に立て、その反動で素早く立ち上がると、私の目の前に迫ってきた。
「うわわっ」
全くの不意打ちだった。
私は態勢を整える間もなく、奴の攻撃にさらされそうになった。
その時だった。
「危ないっ」
咄嗟にラミーが私の前に飛び出してきて、ガイランドルと向き合うようにして、私をかばった。
と同時に、ラミーの体が一瞬大きく揺れた。
「ラミーっ」
私は思わず叫んでいた。
見ると、ガイランドルの手刀が、ラミーの胸部に突き刺さっていた。
と、ラミーはガイランドルに抱きつくように、そのまま前のめりに倒れていった。
(つづく)

