みっちゃんの惑星 (33)
「山崎さん、教えてください。その通信装置から一体、どんなメッセージが?」
その様子を見て、矢も盾もたまらず、みっちゃんのお姉さんが山崎さんに問いかけた。
すると山崎さんは、一旦唾を飲み込むと、私の右腕から手を離して言った。
「なんとも不思議な感覚です。こんなのは初めてだ。具体的に言語で伝わってくるのではなく、心の奥底に想いがしみ渡ってくるような。うまく言えませんが、そんな感じです」
「で、その内容は?」
私はつい、せかすように問い質した。
「頭の中にふわーっと太陽のビジョンが広がってきました。そして暖かい光が頭全体を包み込み、私に囁くのです。我々が必ず救いにくる。だから皆を集めてあの場所で待てと。その光はまさに希望の光でした」
山崎さんは、恍惚の表情でそう答えた。
気のせいか、血色も大分よくなったように見えた。
「そのメッセージはブッダマル星からなんですね?」
と、今度はみっちゃんのお姉さんが質問した。
すると山崎さんは、やや顔を俯かせて答えた。
「はっきりとは分かりません。ただうまくは言えませんが、感覚で分かるのです。私は以前、父から聞かされていました。父たちが住んでいた銀河では、この星と同じように太陽が存在していると。そしてブッダマル星は銀河の守護星と呼ばれている星で、太陽が暴走しないよう、太陽の光が惑星間に穏やかな温もりを与え、生命の糧として機能するようコントロールしているのだと。そのメカニズムについては詳しくは知りません。ただブッダマル星とは、決して文明に感化されない、神秘に包まれた惑星なのだそうです。今、私が頭の中で見た光とは、まさにそんな、全てを柔らかく暖かく包み込むような、神秘的な光でした。だから私は、自分の感覚を信じたい。このメッセージこそ、ブッダマル星からのものだと。そしてブッダマル星は健在なのだと」
「山崎さん。ブッダマル星は危機にさらされているんですか?」
私がそう問い質すと、山崎さんは急に全身から力が抜け落ちたように、再びベッドの上に上半身を横たえた。
そして空を見つめながら答えた。
「父から聞いた話では、父たちが宇宙船で旅だった直後に、銀河でクロノボットによる大規模な反乱が起きたそうです。それまでクロノボットたちは、召使いとして惑星の人々に酷使され続けてきた。だが次第に、彼らの中に自我が芽生え始めた。彼らは密かに機械兵団を組織していたのです。そしてある日突然、反乱ののろしを上げたのです。こうして、やがて惑星は次々にクロノボットたちに制圧され、守護星ブッダマル星が奴らの手に落ちるのも、時間の問題だったそうです」
「もしブッダマル星が奴らに制圧されたら、太陽のコントロールが利かなくなってしまいますね?」
「そうなのです。クロノボットたちは機械の体を持っている。だからある程度の高温には耐えられますが、星人には無理だ。だからクロノボットがブッダマル星を制圧したら、星人はひとたまりもない。太陽光の制御が利かなくなり、星人は高熱で死滅してしまうのです」
「なんてことだ。でもよかったですね。まだブッダマル星は無事みたいで」
「私も今のメッセージを聞いて、それを信じています。おかげで私は希望を抱くことができた。私はまだ死なない。必ずや病を克服し、必ず倒す。ガイランドルを」
山崎さんは空を見つめたまま、力強く言った。
と、私はそれを見て、ふとある疑問が頭の中をよぎり、思わず山崎さんにぶつけていた。
「ガイランドルはなぜ、宇宙船に乗っていたんですか? まさか観光旅行をしていたとは思えないけど……」
「父から聞かされた話では、どうやら観光旅行というのは見せかけで、実は星人たちはこの地球に、何かの調査をするためにやって来たというのです。そしてその動きを察知したクロノボットたちが、密かに父たちの動向を探るため、宇宙船に潜入させたのがガイランドルだったのです」
「調査? この地球に? 一体何を調査しに?」
(つづく)

