みっちゃんの惑星 (24) | 「HEROINE」著者遥伸也のブログ ~ファンタジーな日々~

みっちゃんの惑星 (24)


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「へっ?」


私は、お姉さんの口をついて出た、その聞き慣れない言葉に驚き、思わず声を上げた。


ブッダマル星人?

お姉さんは私が、エイリアンだとでも言いたいのだろうか?

しかしとんでもない誤解だ。

私は間違いなく人間である。

しかも凡人だ。


私は、呆気に取られ、ただただ不思議そうにお姉さんの顔を、見つめるばかりだった。

お姉さんは、そんな私の様子を見ると、慌てて眼鏡をかけた。

そしてしげしげと、私を眺めた。


と、私の全身に一瞬緊張が張り詰めた。

もしかすると、自分で気づいていないだけで、本当は私はエイリアンなのではなかろうか?

ふとそんな不安が、頭の中をよぎったからだ。

お姉さんはそんな私の不安をよそに、暫くの間、興味深く私の顔を眺めていた。

しかしやがて、落胆して溜息を吐くと、そっと眼鏡を外した。

そしてそれを私に差し出した。

どうやら当てが外れたようだ。

私は眼鏡を受け取ると、ほっと安堵の息を洩らした。


「ご、ごめんなさい。つい変なことを口走ってしまって」


お姉さんは冷静さを取り戻すと、私に謝った。


「い、いえ。でもお姉さん。さっき言ってた、ブッダマル星人って、一体……」


私は恐る恐る、お姉さんに聞いてみた。

すると彼女は、静かな口調で答えた。


「みつ子が言った通り、彼らにとっての、唯一の希望」


「希望?」


「あなたはどうやら、本当に何も知らないようね。でもその眼鏡を持っているということは、気づいているでしょう? この世界には、この星以外の生物が、私たちに紛れて生きているということに」


「ええっ?」


まさかとは思っていたが、本当だったのか……

私は、その真顔で話すお姉さんを見て、即座に納得した。


「じゃあ、みっちゃんも?」


私がそう聞き返すと、お姉さんは黙ったまま頷いた。


「でも、みつ子の見当違いだったみたい。あなたはどう見ても、普通の人間だわ」

「あなたたち、一体さっきから何の話を?」


するとその時、さっきからずっと黙ったまま私たちの会話に聞き入っていた瑞穂が、突然口をはさんできた。

するとお姉さんは彼女を振り返ると、「ごめんなさい」と謝った。


「これ以上は話せないわ。否、話さない方がいいわね。これ以上知ってしまったら、あなたたちが危険に巻き込まれることになる」


「お姉さん、僕はすでに、さんざん不思議な出来事に遭遇してきてるんです。今更危険だなんて。もう覚悟はできている。だから、どうか真実を教えてください」


「だめよ。これ以上関わったら、本当にあなたが危険なのよ。それにみつ子も、それを望まないと思う。いい? この眼鏡をどうやって手に入れたのかは分からないけど、すぐにこれは処分した方がいい。何なら、私が預かってもいいわ。それにあなたが見てしまった異星人たちにも、これ以上関わらない方がいい。絶対にね」


「で、でも。みっちゃんは、みっちゃんはどうなってしまうんですか? そのブッダマル星人とかいうエイリアンが、何か鍵を握っているんですか?」


「みつ子、否、彼らを助けられる唯一の希望とだけしか分からない。でも、もはやこの世界には存在していないといわれているの。彼らも今までずっと探し続けていたわ。でもとうとう、見つけられなかった。ああ、だめ。これ以上、話せないわ」


お姉さんはそこまで言うと、両手で頭を抱え込んだまま、黙り込んでしまった。

するとその時―


再びみっちゃんが、唸り声を上げながら、右手を大きく揺さぶった。


「み、みつ子……」


それに気づくと、お姉さんは慌てて、みっちゃんの側へと近寄った。

と、私と瑞穂も慌ててその後へ続いた。


「何? 何なの? みつ子」


お姉さんが問いかけると、みっちゃんは目を閉じたまま、苦しそうに声を発した。


「あのフィギュアは、カ、カングラーに……なぜかは、わ、分からない……でも、あ、あれはカ、カングラーに反応し、している……」


それからみっちゃんは、「カ、カングラー」と言って私を呼ぶと、目を閉じたまま、右手を差し伸べてきた。

私は即座に、その手を両手で握りしめていた。

するとみっちゃんは言った。


「カ、カングラー、か、過去のことは気にし、しないで。お、おじいさ、さんは、もう寿命だ、だったの。あなたの、せ、せいで、死んだんじゃ、ない。そ、それ、より……」


「それより、何?」


「あのフィギュアは、あ、あなたに、も、持っていて、ほ、欲しい。フ、フィギュアもそう、望んでいる、みたい。お、お願いね……」


そしてどうにかそこまで言い終えると、みっちゃんは再び意識を失ってしまった。

と同時に、私が握りしめていた彼女の右手から、すーっと力が抜けていった。


「みっちゃん。みっちゃん」


私は何回も呼び続けたが、みっちゃんが再び目覚めることはなかった。


(つづく)

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