みっちゃんの惑星 (23) | 「HEROINE」著者遥伸也のブログ ~ファンタジーな日々~

みっちゃんの惑星 (23)


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「み、みっちゃん」


私は再び叫ぶと、フィギュアを慌てて床に置き、みっちゃんの側まで近づいていった。

そしてその右手を、両手で包み込むように握りしめた。

すると、みっちゃんの全身が、ぶるぶると震え始めた。

その様子は、いつか花田社長と初めて会った時に似ていた。

あの時も突然、花田社長が私の手を握ると、全身を震わせたのだった。


「みっちゃん。一体どうしたの? どうしたの? みっちゃん」


私は懸命に問いかけた。

しかしみっちゃんは目を覚まさなかった。

だが、これだけは分かった。

みっちゃんは、私の体を媒体に、あのフィギュアの見えない力によって突き動かされているのだと。

ということはもしや―


その時、私の頭の中を、ある疑念がよぎった。

それで私は、スーツの内ポケットに右手を入れると、あのブッダーマン変身眼鏡を掴んでいた。


まさかとは思うが、みっちゃんもこれを掛けると、あの花田社長のように異星人の姿に見えるのだろうか?

否、そんな馬鹿なことがあるはずかない。

それを確かめるのだ。


私はそう決意すると、ゆっくりと眼鏡を取り出し、掛けようとした。

その時―


「ま、待って」


お姉さんが突然、私に声を掛けると、それを制止した。


「お願い。見ないで。その眼鏡でみつ子を」


「えっ?」


私は驚いて、眼鏡を手にしたまま、その場で固まってしまった。


「あなた、知っていたのね」


お姉さんはそう言うと、慌てた様子で私の側まで近寄ってきた。

そして私に右手を差し出し、「眼鏡を貸して」と言った。

それで私は、言われた通りそっと眼鏡をお姉さんに手渡した。


「あなたは何者なの?」


お姉さんは眼鏡を手にすると、突然私を睨みつけ、問いかけた。


「な、何者って……」


私はどう答えてよいのか分からず、つい口ごもってしまった。

しかしよくよく考えてみると、それを聞きたいのはこっちの方だった。

それで私は、思い切って聞き返した。


「お姉さんこそ、一体何者なんですか? このフィギュアや眼鏡の謎について、何か御存じなのですか? 僕には何が何だかさっぱり分からないんです。突然、このフィギュアが光ったり、その眼鏡をかけたら変な物が見えたり。」


するとお姉さんは一変、今度は不思議そうな顔をして、私を問い質した。


「あなた、そのフィギュアをどこで?」


そう聞かれた時―


ついにその時が来たと、私は腹をくくった。

そして思い切って、真実を告白した。


「実は……申し訳ありません。ずっと、ずっと胸に秘めたまま、いつかはみっちゃんに話さなくてはならないと思いつつ、なかなか切り出せずにいました。でもやはりきちんと話さなくてはいけないと思って、今日このフィギュアを持ってきたんです。これは僕が小学生の頃、当時みっちゃんのおじいさんが経営していた駄菓子屋さんから、無断で持ち出したものなんです」


「つまりは、盗んだってこと?」


お姉さんが厳しい口調でそう問い返すと、私は小声で「はい」と返事をし、体を縮こまらせた。「しかもその時、おじいさんは何者かに襲われて、お店で倒れていたんです。私はそんなおじいさんを見殺しにして、そのフィギュアを持って逃げだしてしまったんです」


更に続けて告白すると、お姉さんの表情が一気に険しくなった。

そして私を鋭い眼光で睨みつけると怒鳴った。


「この恥知らずっ」


とその時だった。

またしてもみっちゃんが、右手を大きく揺り動かし始めたのだ。

そして今度は、何かを言おうと、口を一所懸命に動かしていた。

それを見たお姉さんは、慌ててみっちゃんの側まで駆け寄ると、そっと酸素マスクを外した。

そしてみっちゃんの顔を悲しげな目で見つめる、問いかけた。、


「何? みつ子。どうしたの?」


するとみっちゃんが、必死で声を発した。


「いい・・・の。カングラーは、わ、私たちの……希望……なの」


「ええっ、何? 希望?」


お姉さんが再び問いかけると、みっちゃんは右手を震わせながら人差し指を立てると、床に置いたフィギュアを指さした。

と、同時にまたしてもフィギュアが、真っ赤に輝き始めた。

それを見て、姉さんは私を振り返ると、呟いた。


「あ、あなたはまさか、ブッダマル星人……」


(つづく)


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