ヤクザ屋さんに拉致されそうになる。
私、競売屋さん、ブラック企業に勤めたことがありまして、その時、顧客である、ヤクザの親分に、スカウトされたことがあります。
このヤクザの親分は、渋谷でキャバクラを経営してるとか、新宿に飲み屋を3軒持っているとか。
店長として、うちの会社に来ないかというのが、相手の趣旨でした。
私が勤めた競売屋の社長。
業界では有名人で、競売でヤクザ屋さんの組事務所を落札して、脅しにきた組員を警察に突き出し、逮捕させた前例がありました。
裏稼業の人たちは、この社長のチンコロが原因で、刑務所に何人か服役しましたので、その恨みたるや、相当なもんだと思います。
裏稼業の人達が、そのまま大人しく引き下がるわけがありません。
必ず報復があるはずです。
その時、収監された囚人が、そろそろ刑務所から出てくるという噂は、他の従業員から聞いて知っていました。
ある朝、私をヤクザ屋さんにスカウトしようとした人が、会社にやって来て、戸建てを2つ買うと社長を通して言ってきました。
600万くらいの小さな家だったので、なにも不思議はないのですが、この人、不動産の案内の最中、セックスの話ばかりしていて、年が50代の割には、おかしな人もいるもんだという印象を強く持ちました。
結局、戸建てのうちの1つは、難癖を付けられ、決済日、当日にキャンセルとなり、もう1つの方だけ、決済することになりました。
私たちは、何も臆することなく、決済場所、司法書士事務所に向かいます。
決済の金種は現金。
社長は物でも扱うかのように、600万円を背中の、ナップザックに放り込みます。
それを見て、ヤクザ屋さんみたいな人が、いい賭博場があるから、そこに行かないかと執拗に社長を誘います。
社長は体よく断ります。
ギャンブルに興味はない、はっきりと言い切ります。
ならばということで、急遽、ファミレスでお茶でもしようと言うことになり。ヤクザ屋さんみたいな男の人に連れられ、ファミレスに車2台で向かいます。
その頃は、怪しい人だとは思っていましたが、まさか本物のヤクザ屋さんだとは思っていませんでした。
ファミレスに着くと、既に駐車場に停めてあった、ジャガーに乗っていた若い衆、見るからに血の気の多そうな男たち、5~6人が車から一斉に降り、私たち(社長と私)を取り囲むようにして店に入っていきました。
なんか変だな、そう思いましたが、まさかその時は拉致されるとは思ってもみませんでしたので、ファミレスに、のこのこと入っていきます。
店に入り、クリーム・パフェを社長が注文し、長々と話をしていると、ヤクザ屋さんみたいな、おじさんが、【あのとき、社長が刑務所に送り込んだ○○組の若い衆が、娑婆に出てきたの、知ってるか?】、とかなんとか話を始めます。
『○○組の若い衆とは、あれ以来、会ったか?』
命を狙ってるらしいぞ、そんなことを男が言い始め、暫くして、隣のテーブルを指さします。
『○○組の若頭や、あんさんに何か言いたいことがあるらしいで』
私は隣のテーブルを見ました。
飲み物も何も注文していない血の気の多そうな背広姿の男達、6名くらいが、こちらを睨んでいました。
私は社長を見ました。
社長は、さすがに場数を踏んでいるのか、隣のテーブルをチラリとも見ませんでした。
どうも私たちは、拉致されるために、賭場に連れて行かれそうになり、ファミレスに行ったことが判明しました。
その後、どうなったかって、多くは語りませんが、私は会社を辞めましたよ。
社長の懐刀として、ナンバー2として、会社を切り盛りしていましたが、相手は、本職のヤクザ屋さんです。
社長が、ヤクザ屋さんから恨みを買っていることがよくわかりましたので、なにか事があってからでは遅いと思いまして、会社を穏便に退職させていただきました。
私ら素人の1人や2人。
本気でどうにかしようと思ったら、彼らは実行するでしょうし、こんなことで命を落としたくないというのが実感でした。
社長は中国人からも、不動産のトラブルで狙われているって言っていましたので、なんか見てはいけないものを見てしまったような気がします。