1980年3月22日(土)午後6時30分 原宿ラフォーレプラザ
朝からどんよりとした曇り空の印象のあるその日。大学進学が決まった
お祝いにと友人と二人連れ立ってコンサートに向かった。
多少の予習をしていったものの、ほんの数曲しか頭に残っていない
状態で会場に向かった。
それほど自分にとっては、物見遊山のミュージシャン。
Jimmy Page 、Paul Simon が影響を受けたギタリストという方に興味が
あったほどでしかなかった。

しかし、オープニングから2~3曲始まったとき、会場全体に漂う
ただならぬ静かな興奮の坩堝に、いつのまにか自分も巻き込まれていた。
「Ah,Next Song Suite:Bird」英語に弱い耳にもはっきりと聴き取れる
紹介の後、ギターとフィドルが奏でるメドレーに、思わず胸が締め
付けられた。
曲名が解らないのに「鳥が飛翔している姿」が眼に浮かんでくる。

1時間が経った頃、ギターを折りたたみ椅子に置いたまま、休憩時間に。
誰もが注視するなか勇気を振り絞って、そのギターの弦を指で弾いた。
「お、おい。これレギュラーチューニングだよ」
「ウソだろ!げっ、ホントだ」
あれだけ複雑に奏でられた楽曲は、絶対にオープンチューニングだと、
はじめから決め付けていた。しばし、呆然。
コンサート終了後、レコード購入+握手会のため、友人はホールの外に
向かう。空になったホールにひとり残り、余韻に浸っていた。

すると突然、Bert が控え室からホールに、マネージャーらしき人と
現れた。足をガクガクさせながら、彼に歩み寄った。
「 I Saw The Light of Four Seasons in Your All Song.Thank You,
Thank You Very Much」
しどろもどろに、むちゃくちゃな英語を告げて頭を下げた。
「Oh! Boy. Thank You」そう告げる声を聞きながら、顔を上げると、
ガシッと私の右手を握り、むんずとタバコ臭いGジャンの胸に
抱き締めてくれた。”あ~、想いが伝わったんだ” 
とてもとても幸せだった。
エレベーターに乗って友人とふたり外に出ると、雪が降っていた。
「出来すぎだよなぁ~」ふたりで顔を見合わせて思わず笑っていた。

あれから35年。あの日の光景と余韻はいまでも続いている。
なのに、Bert も私の友人も今はこの世にいない。
手元にあるチケットとCDは、何にもかえがたい大切な想い出に
なっている。