小説家・宮岡信之助が待望の新刊を出した。
しかも、新書である。
商魂たくましい宮岡のことだ、最近の新書ブームにあやかろうということなのかもしれない。
しかも、テーマは「政治」。
宮岡が政治に興味があるとはつゆ知らなかった。
帯には、筆者の言葉として次のように書かれている。
「長年、小説稼業の傍ら政治をウォッチしてきた末に、ようやくたどり着いた政治の核心と確信」
かつては「私にとって神聖なもの」とさえ語っていた小説を、何の躊躇もなく「稼業」とあっさり書いてしまう今の宮岡の感覚もどうかと思う。
それ以上に、最後の「政治の核心と確信」は全く意味不明で、ただの言葉遊びといわざるを得ない。
こういう言葉遊びを、作家という言葉を扱う者が軽々しくしてしまうことを恥ずかしいと思わないことがイタイ。
まあ、でも、そこまではギリギリ許容するとしよう。
でも、この本のタイトルは一体どういうことなのか?
『橋本政権とは何か』
ざっと頭に浮かんだものだけでも、疑問は47ある。
まず、何故、今、「橋本政権」を振り返る必要があるのかということ。
ほんの一時期を除いて長らく続いた自民党政権が終わり、民主党政権が国民の期待を背負って誕生した。
いい悪いは別にして、民主党政権の話題が連日、マスコミを賑わせているのは周知の通りである。
今、橋本政権を振り返る必然性は1ミリもないどころか、国民にしてみれば「は? 橋本政権?」と顔をしかめるのがオチではないか。
ニーズは限りなくゼロで、とても売れるとは思えない。
今、振り返るとすれば、前政権の麻生政権か、せいぜいその前の福田政権くらいまでがギリだろう(それだってニーズがあるとは思えないが……)。
橋本政権を振り返る必然性がそもそもないという前提に立って、それでもなお過去の自民党政権を取り上げたいというなら竹下でも宮沢でも森でも小泉でも良さそうなものだが、何故、橋本政権なのか?
たとえば、民主党政権誕生のきっかけを作ったのが実は橋本政権だったという遠大な話なら分かるし、興味も沸く。
だが、それなら『橋本政権とは何か』というタイトルが×だし、帯には民主党の「み」の字も鳩山の「は」の字もないからそういうことではないのだろう。
しかも、
『橋本政権とは何だったのか』
と過去形ではなく、
『橋本政権とは何か』
と、まるで現政権をタイムリーに取り上げたかのようなタイトルである。
と思い至って、半ば慌ててページを繰った。
「まえがき」を読む。
「社会党の村山富市委員長を首相にいただいた村山政権から、橋本政権に交代した。平成8年1月のことである。元来、社会党にアレルギーのある私には、少なくともその党首を首相にした政権は我慢のならないものであって…(中略)。本稿を書いているのは橋本政権発足からわずか1ヵ月しか経過していない。編集者からは無謀という指摘もいただいたが、私の知識と経験を総動員して本政権の行方を占ってみたい」
なんと驚いたことに10年以上も前に書いたものを、今、新書として発刊したのである。
本政権の行方を占うもなにも、橋本政権は平成10年の参院選で惨敗し、総辞職するという結果に終わっている。
本書の「あとがき」を読むと
「自民党政権としては戦後最長、軽く10年は超す長期政権になるのは筆者だけでなく、多くの専門家が予測しているところ」
と書いてある。
「そんな予測、誰もしてねぇよ」と、僕は本に向かって思わず毒づいた。
そのクソ本が今、僕の目の前にある。
ムカつく。
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宮岡関連の過去記事はこちら↓↓↓
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