先日テレビジョンのバラエティー番組を観ていたら、男性が自分の目の前で難しい漢字を難なく書いたのに惚れ込み、付き合うことにしたというエピソードをある女性タレントが披露していた。


その後結婚もしたという。


これを聞いた周りの女性タレントたちも盛んに同意していた。


ほぇ~寡聞にして知らなかった。


もっと早くこのことを知っていれば女性に苦労することはなかった。


合コンでもポケットにペンとメモ用紙を忍ばせ、何かといえばこれを取り出して難しい漢字を書く。


さすれば女たちが俺に惚れて、今すぐにホテルへ連れてってと、こうなる。


もっとも5人も連れて行くわけにはいかないから、そのうち一人を適当に選び……というかまあ顔の造作や体型などを基準に1人を選定し、口惜しくて泣き叫ぶ4人を置いて当該の美女と連れ立ってホテルへ。


もちろん難しい漢字を書ける僕にホテル代を払わせるわけにはいかないから、美人が「私にぜっひ支払わせてください、その代わりといっては何ですがもっと難しい漢字を書いていただけないかしらん、まあ素敵」か何か言って俺にしな垂れかかってくる。


キャバクラでも同様で、僕に付いたホステスに難しい漢字を書いてみせる。


するとどうでしょう。


その情報はたちどころに店内を駆け巡り、店中のホステスたちが僕を取り囲み、指で僕の顎を撫でたり頬に接吻したりしてくるから、漢字ってのは凄いなぁ、威力絶大だなぁ、精力絶倫だなぁとしきりに感心した感嘆した。


とりあえず今からでも遅くはない、思い立ったが吉日と、爾来、紙とペンを懐に忍ばせて生活していたら。


昨日のことであるが、会社で後輩の女性社員と、今度生まれてくる僕の子供の名前について話が盛り上がった。


僕はすかさず紙とペンを懐から取り出し、いくつかある名前の候補を書いてみせた。


どれも決して難しいとはいえない漢字なので、


「たとえば、バラオなんてのはどうだろう?」


なんつって我田引水。


「バラオ」の「バラ」はもちろん、あの花のバラである。


ところが「薔薇」なんて漢字が簡単に出るわけもなく、紙に


「バラ男」


と書いて


「ははは。そういえば、昔、『薔薇族』って雑誌があったよね。あのホモとかゲイの人たちが好んで読む……」


なんて言ってお茶を濁したが、明らかに引いていた。