今日これから、弟の挙式で放映するビデオ撮影を行う。


兄の立場を利用して「俺も出演させろ」と要求、半ば強引に認めさせた。


自分は照れ屋で小心者のくせに、昔から人前でパフォーマンスをするのが好きなのである。


で、せっかく出るなら、面白いことがしたいと、この1週間プランを練った。


舞台は新郎つまり弟の控え室。


本番で弟が会場を退出し、控え室に入った直後に映像を会場に流すので、出席者にはリアルタイムで控え室の映像を流していると錯覚するはずだ。


僕は、読者も薄々お気付きの通り、猪木の格好をして弟と掛け合いを演じることにした。


「俺の控え室で何やってんだよ」


「何って余興に出るんじゃないか」


「余興なんて予定にないよ」


「え? せっかく猪木の準備したのに……」


「とにかく余興なんて出来ないから」


「元気があれば……」


「だから出来ないって」


先日のブログにも書いたが、「ゴカンダンの時間を十分確保してほしい」が口癖のプランナーから、余興はこれを厳禁されており、出席者に配布される次第にももちろん予定はない。


その後、僕はせっかくだからと着替えを手伝うことを提案。


替えのタキシードを求める弟に学ランや柔道着を着せ、弟に乗りツッコミをさせる。


「ごっつええ感じ」のミスター・ベーターのイメージである。


ここまでのプランは当初すべて弟から言下に却下されたが、兄の立場を利用して半ば強引に認めさせた。


「晴れの門出に、避けては通れない道なんだよ」


と説得すると、弟は急にしおらしくなって納得した。


アホだ。


ただ、これだけだとどうも物足りない。


ビデオ撮影時と本番との間に時差があるのだから、何とかこれを活用したかったのである。


そこで夕べ、妻の熊子に助言を求めた。


「パイを新郎の顔にぶつけるなんてどう?」


ベタだが、妙案である。


パイを準備する余裕はないが、幸い冷蔵庫の中には、以前にコストコで購入した賞味期限切れのホイップクリームがある。









これをスポンジケーキに塗りたくって、弟の顔にぶつけるという算段である。


当日放映する映像はそこまでで、直後に弟が再び会場入りすれば、時差を生かすことが出来る。


「じゃあ、早速実験してみよう」


と熊子。


え?


既にシャワーも浴びた自分が首をぷるぷる振ると、熊子はさっさと立ち上がって実験準備を始めた。







なす術もなく見ていると、これも賞味期限の切れた食パンにホイップクリームを山ほど噴射している。


目に凶悪な光が宿っているように見えた。


「はい」


食パンを手渡された。


「はい、って……。まあ、やれと言われればやるけど、まだ心の準備が……」


「何言ってんの。私によ」


「は? い、いいのかい?」


「あなたのしたいことじゃない」


「後悔しない?」


首を横に振る熊子。


初夜じゃないんだから。


「本当に……」


「いいってんだろっ! 早くやれよ」


「済まない、恩に着る」


って即席の“パイ”を熊子の顔に押し当てた。









ありがとう。