連日弟の話で恐縮だが、今度弟と結婚する人の兄さんは現在、警察官を目指している。
きっかけは、僕もこれを弟から聞いて驚いたのだが、速度超過で警察に捕まったことだという。
血の気の多い兄さんは
「こんなことして交通事故がなくなると思っているのか」
「姑息なことをしないでパトロールでもしてろ」
と食って掛かった。
警察官はまともに取り合うことなく、丁寧な口調で宥め続けたという。
兄さんが冷静になったところで、調書を作成するため質問を始めた。
「あなた仕事は何をしているの?」
「契約社員です」
「そう、大変ですね」
警察官から労いの言葉をかけられ、兄さんは気を良くしたのだろう、身の上話を始めた。
「実は最近結婚して子供も生まれたので、定職を探しているんです」
「それなら警察官になればいいじゃないですか?」
「僕が、ですか? いやー無理っすよ。勉強できないし。年齢もいっちゃってるし」
「今、社会人採用もしているんです。○月×日に試験があって、まだ申し込みを受け付けているから、良ければ応募してみたらどうですか?」
「いやいや僕なんかとてもとても……」
兄さんは帰宅して早速申し込みをした。
先日、筆記試験があり、見事にパス。
最近、面接試験も受けたという。
志望動機を尋ねられた兄さんは、素直に
「スピードオーバーで警察官に捕まって、それで警察官になろうと思いました」
面接官たちは怪訝な表情で顔を見合わせ、一番年嵩の人がぽつりとつぶやいた。
「そんなの……聞いたことないなぁ……」
今、兄さんは試験結果の通知を、鼻息を荒くして待っているという。