夕べ、会社の後輩H子の恋愛相談に乗った。
H子には札幌で7年同棲した男がいるが、先月転職のため東京へ越して行った。
「落ち着いたら東京へ呼び寄せる」
と言い残して。
だが、先週東京へ遊びに行こうと飛行機のチケットまで手配したのに、「忙しいので会えない」と直前になって断られたという。
「でも、まだ彼には未練があるんです。別れるべきなのでしょうか?」というのが相談の主旨である。
なるほど、分かりました。
結論から言うと、焦って別れる必要はないというのが僕の回答である。
周囲は「そんなひどい男、別れてしまいなさい」という声が大勢を占めるという。
そら、ずばっと三行半を叩きつければカッコいいかしれん。
でも、7年も同棲すれば情もあるし思い出もある。
そんなに簡単に断ち切れないというのが実際のところだろう。
ただ、巷間言われるように、次のお相手が見つかれば忘れられる。
この点については、H子も前向きである。
では次の恋を成就させる上でH子の現状はどうかというと、残念ながら男と出会う機会に恵まれているとは言い難く、これは当人も自覚しているが30歳という微妙な年齢である。
友人いわく「ひどい男」でも彼氏は彼氏、その彼氏のいる有利な立場を利用して、新たな恋を見つけるという戦術がベターに思われる。
「有利な立場」というのは、ここでは一応の彼氏がいるということで生まれる心の余裕のことを指す。
いわゆるモテる人がなぜモテるのかと言えば、容姿の良さに端を発してモテることで生まれる心の余裕がモテ度を増すという好循環を創出しているからである。
一方で、いかにも風采の上がらない30歳の男が「30年彼女いません」と告白したとする。
周囲の女性は「あーやっぱり」と得心し、評価を一段と下げる。
「モテない」ことが次なる「モテない」を呼ぶ悪循環である。
モテない僕が言うのだから間違いない、これは厳然たる事実である。
で、H子の場合はどうかというと、一応、彼氏がいるという「擬似モテ」の状況にある。
彼氏とすぱっと別れて丸裸の状態で次なる恋を探すのに比べると、そのアドバンテージは大きい。
「まあ、この人が駄目でもとりあえず彼氏はいるんだし」と思える心の余裕は、神々しいとまでは言わないがある種のオーラを具備することになる。
それを利用して次の彼氏を獲得し、而して後に今の彼氏と別れるというのが最もリスクが少なく、かつ合理的な方法である。
一般的には不人情であくどいとの非難は免れないかもしれないが、出会いの限られている恋愛弱者に手段を選んでいる余裕はない。
2万5千の今川軍に、その10分の1の軍勢で勝利したのは奇襲が奏功したからで、後世それを悪く言う人はほとんどいない。
まさに勝てば官軍、H子に首尾よく次の彼氏が見つかることを祈念してやまない。