〈解説〉
3人が死亡したソープランド「江戸城」の火事をめぐり、札幌市消防局がススキノ地区で実施した同業全39軒への立ち入り検査で、全体の8割に及ぶ店が消防法に違反していることが分かった。
危険の芽が放置されている現状のままでは、全国有数の歓楽街のイメージ低下は避けられない。
関係業者は、早急に改善措置を講じるべきだ。
検査結果によると、最も違反が多かったのが「消防訓練の未報告」で、29店が怠っていた。
火災報知器を設置していない店も1店。
避難誘導灯を設置していなかったり、設置していても非常口付近になかったりした店も9店あった。
あまりに杜撰な管理体制と言わざるを得ない。
利益優先で安全を後回しにしていたとすれば、客離れは避けられまい。
一方で、当局の対応にも問題がある。
同局によると、「江戸城」への立ち入りは6年間で5回立ち入り検査を実施。
その都度違反を指摘したというが、改善報告の提出を促したのは電話による2~3回だけで、罰則を伴う是正命令は発動していなかった。
同局はこの反省に立ち、今回の検査で違反が確認された31店には徹底改善を求める方針。
この際、さらに立ち入り検査の対象を拡大し、早期に危険の芽を摘み取るべきであろう。
(牛田馬夫)
◇
デスクの笑谷実に牛田が呼ばれたのは、「解説」記事を送稿してきっかり30分後だった。
ペンを口と鼻の間に挟み、天板に片肘を突いた姿勢でパソコンのディスプレイを見詰める笑谷を見て、牛田は暗い気持ちになった。
書き直しを命じられるのが目に見えていたからである。
「これじゃあ何ともなぁ…」
果たして笑谷は、原稿の出来の悪さを難じ始めた。
「何ていうのかなぁ、言いたいことは分かるんだけど、なんだかなぁ…」
ぴしゃりと要点だけ指摘して書き直しを命じられるならどんなに楽だろう。
ただ、笑谷は日頃のストレスを解消するためか、持って回ったような言い方でねちねちと非を論うのが常だった。
「あの、はっきりどこが悪いのか言っていただけませんか」
牛田は、自分でも意外なくらい剣のある口調で言い返した。
笑谷が固唾を飲んだのが分かった。
「あー、えーと、つまり、もっと核心に迫るような、そうホンネだよ、ホンネ」
「ホンネ……ですか」
◇
〈解説〉
3人が死亡したソープランド「江戸城」の火事をめぐり、札幌市消防局がススキノ地区で実施した同業全39軒への立ち入り検査で、全体の8割に及ぶ店が消防法に違反していることが分かった。
ソープランドに立ち入りってのがいいね、どーも。
火事じゃないのに燃え尽きちゃっただって。
危険の芽なんていうけど、むしろ性病の方が怖いかな。
まあ、僕は行くけど。
脱線しちゃいました。
検査結果によると、最も違反が多かったのが「消防訓練の未報告」で、29店が怠っていた。
いかんね。
そんなことだから火災を招いて消防隊がホースから噴射なんてことになるのだ。
ホースから噴射は通常営業の中だけで十分だ。
うまいね、どーも。
従業員がずぶ濡れで避難してきました、だって。
こほん。
一方で、当局の対応にも問題がある。
同局によると、「江戸城」への立ち入りは6年間で5回立ち入り検査を実施。
そのうち4回はプライベートだったという。
うそうそ。
この際、さらに立ち入り検査の対象を拡大すべきだが、そのときは僕にも一声かけてほしいものだ。
(牛田馬夫)
◇
この「解説」記事が掲載されるや、読者から28万件もの苦情が寄せられ、牛田は即刻、懲戒解雇となった。
デスクの笑谷も停職3ヵ月、さらに編集局長の轟団吉が3ヵ月間10%の減俸処分となった。
牛田は現在、インド北部を旅しているという。