最近、妻の熊子が再び頻繁に僕のブログをチェックし始めた。
以前、彼女のことを悪し様に書いたことが発覚した。
そのときは幸い右腕をへし折られただけで済んだが、今度はそうはいかないだろう。
その後、野糞をしたとか製氷こそが生き甲斐だみたいな埒もないことばかり書いて、「はんっ、くだらない」と愛想を尽かしたので安堵していたが、ここ数日僕の部屋で勝手にパソコンをいじり、勝手にブログを見ている。
十分に注意しなければなるまい。
ところで、遅ればせながら熊子がバレンタインの菓子を作ってくれた。
ガトーショコラという。
14日のバレンタインデーではなく、敢えて日にちをずらすあたりが、風潮に媚びていなくて素敵である。
肝心の味はというと、世の中にこんなに美味なものがあったのかと驚くほどで、控え目で繊細な甘みの中に高級感あふれる苦味がほんのりと感じられ、クルミも香ばしく、それらが添えられた生クリームと絶妙な均衡をとっている。
一口頬張れば世界中のありとある幸福が自分を包み込んでいくようで、思わず感涙したほどだ。
こんなに美味しい菓子を作ることのできる熊子ははっきり言って天才。
熊子には菓子作りのほかにも、歌唱、鍵盤楽器、舞踊、詩吟など特技が多く、どれも一級品で、まったくもって僕には過ぎた女房である。
