9月に結婚式を終え、ようやく平穏な結婚生活というものをスタートし、はたと気付いたのは、我が家は結構金銭的に恵まれているということである。


一人暮らしをしていた頃よりずっと豪勢な生活をしている。


たとえば、発泡酒はこれを止めて麦酒にしたし、昼食の素饂飩に餅をつけて力饂飩にすることもしばしば、シャンプーはメリットからハーバルエッセンスに換え、トイレットペーパーもシングルロールではなくダブルロールを使うようになった。


生活水準は間違いなく向上しているのであり、堂々と勝ち組と言っていい水準に達したと言えよう。


妻の熊子もこのことを自覚していたようで、先日、水を向けたら


「私もそう思ってた」


と目を輝かせた。


僕と熊子は勝ち組の仲間入りを果たしたことを大いに喜び、煮しめや昆布巻きを拵え、酒をガンガン飲み、抱擁したりコサックダンスを踊ったりして随分と盛り上がったが、次の日。


郵便受けに大家の名刺があった。


大家が何の用だろうと僕と熊子は訝しく思ったが、それも束の間、勝ち組に何の憂いがあるものか、その晩もチキンのトマト煮や青梗菜とベイコンの炒め物を拵え、白葡萄酒をしたたか飲み、接吻したり都都逸をしたりしてしこたま盛り上がったが、次の日。


やはり郵便受けに大家の名刺があり、裏を見ると


「家賃のことで相談に来ました」


と書いてある。


急速に不安が頭をもたげてきた僕と熊子は、さすがにその日は派手な晩餐というわけにはいかず、粥をすすって午後7時半に寝た。


翌日、熊子が記帳してくると


「残高が足りなくて2ヵ月分の家賃が引き落とされてない」


と顔面蒼白になって僕に訴えた。


1ヵ月分の家賃が8万6千円なので、2ヵ月分では17万2千円…。


大家はこれを徴収せしめに来たのだろう。


殺生なことである。


しかし、一家の大黒柱である僕がこんなことで悄然としていてはいかん。


僕は威厳を保ちつつ、熊子に


「なあ、うちには今いくら貯金がある?」


と尋ねると、熊子は急にしおらしくなって


「うちにはもう4千円ばかりしかお足がないのよ」


と答えた。


悲しい。


僕は今少し泣きながらブログを書いているのだが、書き終えたらアルバイトを探そうと思っている。


すごく前向きな考えだ。