「緋色の欠片」初の二次創作です!!
時間がないので、取り急ぎ!!(後で修正します)



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「ねぇ拓磨、今日何の日か知ってる?」

学校からの帰り道、隣を歩く珠紀が妙にニコニコと楽しそうな笑顔を浮かべながら尋ねてきた。

「今日…?」

問われた拓磨は、ぐるりと頭を巡らせてみる。
誰かの誕生日だったかとも思ったが、思い当たりが無い。強いて言えば慎司の誕生日が近かった様な気がするが、あれは確か来週の筈である。
では何かの記念日とか………とも思ってみるが、特に思い当たるものはなかった。

「もう、拓磨のくせに知らないの~?」

帰って来ない答えに、珠紀はそう言ってわざとニヤッと笑ってみせた。
そのしたり顔に、拓磨はへの字に口を曲げながら、バッグを持っていない右手で、珠紀の柔らかな頬を、フニッとつまみ上げた。

「いひゃい!いひゃいよ!ひゃくま~!」
「当たり前だ、痛くしてるんだから」

…と言いつつも、当然手加減はしているのだが、予想よりもはるかに柔らかだった彼女の頬に、拓磨は少しだけ感動していた。

だが、だからと言って、いつまでもその頬をつまみあげている訳にもいかず、ちょっとだけ指先で彼女の頬を堪能した後、手のひらでそっと一撫でしてからその手を離してやる。
当の珠紀は「もう!」と小さく文句を零しながら、つままれていた頬を労わる様に、何度か手のひらでスリスリと擦っていた。

「で、今日が何の日だって?」

そんな彼女を横目で見ながら、話を進めるべく拓磨が尋ねる。
その質問を受けて、珠紀は今度は少しだけ嬉しそうな目をしながら答えを口にした。

「あのね、今日は『クロスワードの日』なんだって!」
「クロスワード?」

思ってもみなかった答えに、拓磨は思わず聞き返した。
クロスワードと言えば、彼の最大の趣味であり、今日も昼休みに懸命に格闘していた相手であった。

「そう!拓磨の好きなクロスワード!最初にそれ聞いた時に、思わず拓磨の顔を思い出して、ちょっと笑っちゃった!」

その時のことを思い出したのか、珠紀はクスクスと小さく笑う。
クロスワードという単語で、自分の事を思い出してくれるのは嬉しいが……笑われたことに対しては、喜ぶべきか怒るべきか、少々悩みどころかな…と拓磨は思った。

「でね、今から少しだけ寄り道しても良い?」
「寄り道?」
「商店街の方。本屋さんに行って、私もクロスワードの雑誌を買いたいな~って」
「え?」

そう言い出した珠紀に、拓磨は少し驚いた表情を浮かべた。

「お前がクロスワードやるのか?」
「たまにはやってみようかな~って。今日は何て言ったってクロスワードの日だし。それに、いっつも拓磨が真剣な顔でやってるでしょう?何だか面白そうかな~って、ちょっと思ってたし…」
「そ…そうか」

珠紀のその言い分に、拓磨はその目を輝かせて大きく頷いた。
珠紀が自分の趣味に興味を持ってくれたことが、彼にとってはよほど嬉しかったらしい。
照れくさそうにそっと彼女の手を握ると、きゅ…と少しだけ手のひらに力を込めた。

「じゃあ、今から本屋な。俺が適当なのを選んでやるから」
「ホント!?嬉しい!!」

素直に喜ぶ珠紀に、拓磨も満足げに微笑む。
本屋で雑誌を買ったら、一緒に解いてやろう。

そんなささやかな楽しみを胸に抱きつつ、拓磨は珠紀の手を取りながら、冬の気配の濃くなった道を、軽い足取りで歩いて行った。