イケルシニバナ | ホラー映画と発狂女

ホラー映画と発狂女

ホラー、スプラッター、サイコ系映画をメインに観た映画を忘れないよう書いていく雑記帳です。
ネタバレしまくりですのでご注意ください。

イケルシニバナ [DVD]/深水元基,戸田昌宏,河田義市
¥4,104
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✂あらすじ(ネタバレ)

毎日を自堕落に生きるニート、ミロク。
親に金を振り込ませては、汚れた一人暮らしの部屋でゲームをし、ピザを食う。

そんなミロクはある日の町中で美女が配っているティッシュを受け取り、何気なくポケットに突っ込んだ。

いつものようにデリバリーのピザを注文し、部屋で食べながらゲームをしていると、先程届いたはずのピザを届けに配達員がやって来た。
もう届いていると伝えると、配達員は首を傾げながら帰っていった。
突然ミロクは腹痛に襲われトイレに急ぐ。
トイレットペーパーを切らしてしまっていたところ、ポケットに突っ込んだままになっていたティッシュのことを思い出す。
安堵して取り出し、挟まれている広告に目を留める。
<究極の興奮を味わいたい人募集!あなたはきっと入り込むでしょう>
そこに書かれていたurlでHPに行ってみるとそこには
<あなたもハマるリアルゲーム!クリアしたら賞金50万円>
の文字が。
ゲーム好きで、賞金にも惹かれたミロクは早速登録を済ませる。
登録に続き心理テストがあり、詳細な質問にミロクは答えていく。

サイコロで蝉の絵柄を出したミロクは同じ絵柄の書かれた部屋へ、狐の面を被り、錫杖を鳴らす男達に目隠しをされ、連行されていく。
部屋の中にはやはり狐の面を被り、銃を構えた者達と、他にスーツ姿の中年男が床に座っていた。
ミロクも床に座ると部屋の灯りが消え、舞台がライトアップされる。
狐の面を被った2人の子供が跳ねながら幕を引く。
ドレスや宝石で着飾った女達が気だるげに寛いでいる。
「さっきおっしゃってたこと、本当?」
「嘘よ、嘘。絶対嘘ですわ」
「あ~ら、嘘じゃありませんわよ」
「本当よ~。知ってますもの」
「あはは!でも、嘘なんですわよね」
「そうですわよ、きっと嘘ですわ」
「またまた、嘘ばっかりおっしゃって」
「それで・・・結局どうなさるのかしら」
「お人が悪いわ。わかってらっしゃるくせに」
「ぜ~んぶおわかりになるわ。す・ぐ・に」
そこで舞台は暗転し、狐面の子供達によって幕は閉じられる。
ミロクは持たされていた帳面(ノートというほどしっかりした作りではない)に何かを書き込もうとするが投げ出してしまう。
熱心に帳面に何事かを書き込んでいたスーツ姿の男は、そんなミロクを鼻で笑う。
ミロクは和紙の小さい包みを見て回想する。

合格通知を受け取ったミロクは指定された場所に向かう。
そこは門の先に林のある広い敷地に立つ古びた建物で、出迎えたのは和服の老女であった。
老女に案内された室内でPCを操作する老女に送られてきたカードキーで身分確認をされ、手荒な身体検査を受けて携帯とライターを没収される。
小さなテーブルと椅子しかない殺風景な部屋で1人待たされ、老女に差し出された茶と大福を口にするミロク。
大福を味わっていると突如発砲案が鳴り響き、驚いているミロクのもとに錫杖を響かせながら狐面の男達がやって来る。
テーブルにカセットレコーダーを置き、紙芝居とカセット音声によりルール説明がなされる。

1、回答者の答えるべき回答は1つ。出題者達のヒントから回答を導き出すこと
2、回答者には帳面、ペン、残り時間を示す時計、おはじき8個、毒薬が与えられる
3、次の部屋に映るには人形におはじきを渡し、からくり人形がが振ったサイコロの目に応じて移動
4、12時間後に時間切れとなり、茶に仕込まれていた毒で回答者は死亡するが、毒薬で自殺する権利もある
5、正しい答えを出せれば中和剤を入手できる
6、他の回答者との情報交換可。ただし正解は共通で1つのため、正しい回答が同室で出されれば、正解を聞いたものはゲームオーバー
別室にいた場合は正解を聞いていないのでゲームは続行される
7、逃亡を試みたり、主催者側への暴力行為があればその場で抹殺

唖然とするミロクの元へうさぎのからくり人形が近づいてくる。
ふざけんなよ、と逃げ出そうとするが狐面の男達に押さえつけられ叶わない。
うさぎのからくり人形が振ったサイコロには蝉の絵があり、ミロクは連行されていく。

女達のヒントを見ても何もつかめなかったミロクは、未だ何事かを帳面に書き示しているスーツ姿の男を尻目に部屋を移動するため鈴を鳴らす。
やって来たうさぎのからくり人形におはじきを渡し、出た目はカラス。
再び目隠しをされ、狐面の男達に腕をとられる。

カラスの部屋にも先客がいた。
死体と初老の男。
初老の男が
「逃げたりさえしなければ・・・」
と呟く。
狐面の男達が死体を片付け、ヒントの舞台が始まる。
青空に舞うカラスの絵柄の屏風の前に、台に乗り、白いスーツでシルクハットの老人が指揮棒を振り上げている。
「私の秘密手帳を返していただけますか!貴様なんかわからないじゃないですか!
死んでしまえばいいんです!そして奪回すればいいんです!」
今回も全く意味がわからず、ミロクはへたり込んでしまう。
その姿を見ていた同室の初老の男が田中と名乗り、話しかけてくる。
ミロクの残り時間を訪ねてくるので確認してみると、7時間となっていた。
田中の残り時間はわずか2時間になってしまったのだという。
単調な日々を過ごしていた小学校教師の田中は、やはり街中でティッシュ配りをしていた美女に出会ったと語る。
そして刺激を求めて、登録をしてしまった。
似た境遇の田中に、ミロクは自らの境遇やここに至った経緯も話す。
そこへ先ほどの蝉の部屋にいたスーツ姿の男が連れてこられる。
ミロク達が観たものと全く一緒のヒントが演じられ、スーツ姿の男はまた熱心に帳面にメモをとっている。
ミロクと田中が話しかけるが、スーツ姿の男は自分の頭で考えてわからないからって人に頼るのはどうかと思いますけど、と嘲笑う。
あなた達と私は違うのだということを滔々と述べるスーツ姿の男に、ミロクと田中は顔を見合わせる。
そこに新たな回答者2人が連れてこられる。
1人はスキンヘッドの頭にタトゥーの入った男、もう1人は怯えきった女。
女の様子にミロクが声をかけると、スキンヘッドの男が女の鞄を漁り、残り時間が10分になっていることを知る。
スキンヘッドの男は床に転げて爆笑し、女は止める間もなく毒薬を口にする。
女は苦しむ様子もなくパタリと倒れてそれっきりであった。
ミロクと田中は女を悼み、スキンヘッドの男は女のスカートを捲り、スーツ姿の男はそれを冷たい目で眺めていた。
更にスキンヘッドの男は、女の鞄の中におはじきがあれば奪おうとしたものの入っておらず苛立ち、死体を蹴る。
詐欺師を自称するスキンヘッドの男は喜々として詐欺の手法をまくし立て、ミロクは
(こんな奴死ねばいいのに)
と思う。
イカれた様子で騒ぎまわっていたスキンヘッドの詐欺師は、突如詐欺師の自分が騙されたと苛立ち始め、田中のおはじきを奪おうと殴りつける。
田中が血を吐くまで殴る蹴るし、スキンヘッドの詐欺師は次の部屋にいかなあかんのや!と、田中のおはじきを奪い取る。
スーツ姿の男は我関せずで、怯えながら見ているしかなかったミロクは倒れた田中に走り寄る。
なおも暴言を吐く詐欺師にミロクが思わず殴りかかった時にサイレンが鳴り響き、詐欺師が苦しみだす。
絶叫を上げながら転げまわり、大量の泡を吹いて詐欺師は絶命した。
詐欺師の時計の残り時間は0になっていたのだった。
この男はもっと早くに死ぬべきだったんだよと吐き捨て、スーツ姿の男は別の部屋へ移動していく。
まだダメージの残る田中は座り込み、ミロクとここに至るまでの経緯を話し合う。
いつもは行かない場所である渋谷になぜか急に行きたくなり、そこでティッシュ配りの美女にあったこと、渋谷に行きたくなる前にDVDが家に届き、それを観てから渋谷に行こうと思い立ったこと。
ミロクも似たようなもので、ほぼ引きこもりだったミロクがDVDを観て渋谷に行き、ティッシュ配りの美女に遭遇したのだった。
もう時間も、残りのおはじきも少ない田中は分かれて情報収集をしようと提案。
今まで田中が書いてきたヒントも書き写させてくれた。
ミロクはまた会えると信じて残り6個のおはじきを握りしめ、次の出目である風車の部屋へ向かう。

もうミロクはヒントをぼんやり眺めることはせず、一生懸命メモを取る。
今回は色鮮やかな玉すだれの前に手を繋いで立つ、双子の少女達だった。
2人は声を揃えて言う。
「ポチとお別れしたの。でもポチに会えたんだよ。ね~」
ね~の部分では顔を見合わせる。
「でもポチ死んじゃった」
がくりと項垂れる。
「ポチ大切なの残してくれたんだ。ね~」
しっかりメモを取ったミロクは、次の惑星の部屋へ。

惑星の部屋ではなんと田中に再会することが出来た。
ヒントである腹話術人形のようなメイクを施した大男と小男の会話が始まる。
「僕の雌インコ、死んじゃったよ」
「僕の雄インコも死んじゃったよ」
「あいつ行っちゃったね」
「僕、あいつ嫌いなんだ。ヒーヒヒヒ」
「もうさよならする?」
「寂しいけどさよならする?」
「僕、頑張るからね」
「僕だって」
2人は抱き合って泣きマネをする。
「また会えるよね。きっと会えるよ」
再会を喜ぶミロクに田中は、会えて良かった、1人で逝くのは寂しいからねと微笑む。
田中の残り時間は30分しかなくなっていた。
こんなゲームで死んだとわかれば妻子は主催者に恨みを抱き、命を危険に晒すかもしれない。
また田中が行方不明の状態になれば探し続けてしまうかもしれない。
一番いいのは私が妻子に恨まれて探されないことなのだ、と田中は家族を案じていた。
もう毒薬を飲んだという田中にミロクはハッと顔を上げる。
家族に宛てた妻子を捨て、女と逃げるという旨の手紙をミロクに託し、これでいいんですとミロクに帳面を渡してくれる。
田中は、こうやって私とミロク君が出会ったのも偶然じゃない、だから頑張ってくださいとミロクを励まし、死ぬのが決まってしまうと案外怖くないと笑顔を見せる。
ミロクは涙を流しながらも田中に無理矢理笑顔を返す。
田中は最後にありがとうと言い残し、倒れ息絶えた。
別れの余韻もないままに、狐面の男達は田中の死体を運び去っていき、ミロクは生きている価値の無い、誰にも必要とされていない僕が死ねばよかったのにと膝をつく。
やがてミロクは田中に託された手紙と帳面を手に、次の花の部屋へ連れて行かれる。

ラフレシアの絵の前で髪の長い、痩せこけた長身の女が目をむいたり、口を大きく開けて妙な具合にぐねぐねと体を動かしている。
甲高い声で話すヒントは
「さっき会った賢い猫嫌い。優しい猫が好き。
毛のない猫は雌猫と一緒なの。
でも・・・もう・・・いなくなっちゃったあああああ」
そこへスーツ姿の男が連れてこられる。
スーツ姿の男は焦燥しているようで、もう懸命に帳面に何かを書いたりはしない。
時計の残り時間を確認し、ミロクの帳面を寄越せと話しかけてくる。
お前なんかどうせ答えがわかりっこないのだから宝の持ち腐れだ!と怒鳴るスーツ姿の男を素気無く断ると、ミロクよりも自分のほうが生きる価値がある人間だとネクタイでミロクの首を絞める。
錯乱したスーツ姿の男は倒れたミロクを蹴りまくり、その帳面を手に入れる。
スーツ姿の男の残り時間は3分となっていた。
スーツ姿の男は必死でなにかを書き始め、ミロクの前で答えてやると意気込み、遂に答えを叫ぶ。
「わかったぞ!答えは!Σn41/cosineθだ!」
「不正解です」
「合ってるよ!お前らが間違ってんだよ!」
スーツ姿の男がいくらがなってもスピーカーからは同じ返答が繰り返されるばかりで、サイレンが鳴り、スーツ姿の男は喉を抑えて倒れ伏し死亡した。
ミロクはよろよろと立ち上がって奪われた帳面を取り戻した。
次の出目は金魚の部屋であった。
これでおはじきの残りは後3個、残り時間は2時間。

金魚が描かれた金屏風の前に着物を纏った美女が座っている。
「わが授けし集まりし柔らかき紙受け取り、鍵手に入れし者遊園に入り立つ」
そして目を見開き、ニカリと笑う。
その笑顔を見てミロクは、あのティッシュ配りの美女だと気付く。
僕にティッシュくれましたよね!?前にお会いしましたよね!?と美女に近づくが狐面の男達に阻まれてしまう。
ミロクは必死で考える。
そして集まりし柔らかき紙というのがティッシュを指すのではないかと思い至る。

わが授けし集まりし柔らかき紙受け取り(テュッシュを受け取り)
鍵手に入れし者遊園に入り立つ(カードキーを入手してここに来た)

さっき会った賢い猫嫌い。優しい猫が好き。(最初に会ったのはスーツ姿の男で、優しい猫とは田中)
毛のない猫は雌猫と一緒なの。(スキンヘッドの詐欺師と自殺した女)
でも・・・もう・・・いなくなっちゃったあああああ(2人共死んだ)

「僕の雌インコ、死んじゃったよ」(女は自殺し)
「僕の雄インコも死んじゃったよ」(スキンヘッドの詐欺師も死んだ)
「あいつ行っちゃったね」スーツ姿の男は立ち去っていった)
「僕、あいつ嫌いなんだ。ヒーヒヒヒ」
「もうさよならする?」(ミロクと田中の別れ)
「寂しいけどさよならする?」
「僕、頑張るからね」
「僕だって」
「また会えるよね。きっと会えるよ」

「ポチとお別れしたの。でもポチに会えたんだよ。ね~」(ポチとは田中の比喩。一旦別れたが再会出来た)
「でもポチ死んじゃった」(けれど田中は死んでしまった)
「ポチ大切なの残してくれたんだ。ね~」(田中がミロクに残したものを指す)

私の秘密手帳を返していただけますか!貴様なんかわからないじゃないですか!
死んでしまえばいいんです!そして奪回すればいいんです!
(ミロクの帳面をスーツ姿の男が奪った時の様子を示す)

最後のヒントの美女が言っていたのは最初の出来事を指し、最初のヒントに近いほど現在に近づいているということだ。
そうなれば一番最初のヒントが最後のことに言及しているはず。
ミロクはそれに気付いたが、最初のヒントはわけも分からず漠然と聞いていたため思い出すことが出来ない。
残り3個となったおはじきで最初の部屋に戻ろうとするが、出目は金魚であった。
今いる部屋の出目を出してしまったのだ。
この時点で残り時間45分。

次に出たのは風車。
双子の部屋だ。
苛々しながらヒントが終わるのを待ち、即座に鈴を鳴らす。

次も外してしまい惑星の出目だった。
大男と小男の部屋。
移動やスキップできないヒントのせいで残り時間は10分となってしまっていた。
ミロクはなんとか最初のヒントを思い出そうとするが、どうでもいいことばかり頭に浮かぶ。
「嘘だろ・・・」
と呟いて思い出す。
ミロクが答えを叫ぶのと同時に時間切れを知らせるサイレンが鳴り響いた。

気付くとミロクは草むらに倒れていた。
側には賞金と思わしき万札が散らばっていた。
ミロクはそれをのろのろと拾い集める。
田中に託された家族宛ての手紙も落ちていて、開けてみると中には
<おめでとうございます。ゲームクリア認定致します>
と書かれた紙切れが入っていた。

その様子をモニタリングしていたのは最初にミロクを案内した老女であった。
今はかっちりしたスーツ姿であったが。
「このカリキュラムを成功に導いた心理学者や研究員の方たちです」
と部屋の外にいるらしき人々を部屋に招き入れる。
カリキュラムの成功を祝う面々の中にはスーツに着替えたスキンヘッドの詐欺師の姿も、田中の姿もスーツ姿の男も、自殺した女の姿もあった。
自分とは正反対の役だったので、自分の新たな一面が見られたと語るスキンヘッドの詐欺師役の男の頭を、お前本気で殴ったろうと田中がペチンと叩き笑いが起こる。
そして出演者達はお互いの演技を称えあっていた。
田中は僕はね、ああいうの得意なんだよ。
未だに独身だけどね、と笑う。
老女は部屋にいた中年の男女にご満足いただけましたか?と尋ねる。
手元の書類には<ニート更生研究所>の文字。
中年の男女はミロクの両親で、母は昔のイキイキした息子に戻ったような気がしますと満足気だ。
父はまだ心配が残るようではあった。
所長である老女は、過去の症例からも殆どの場合これでニートから更生していると太鼓判を押す。
それでも心配のようでしたらアフタープログラムという、いわばレッスン2もありますがいかがなさいます?と両親に問う。
両親は顔を見合わせる。

ミロクは封筒の中にもう一枚の紙を見付ける。
開いてみると<第二ステージ開始>と書かれ、振り返ると狐面の男達が立っている。

✂一行あらすじ
ニートが巻き込まれるデスゲーム

✂感想
これもかなり好きな映画だ。
女性で美術に力を入れた映画がお好きな方には特にお勧めしたい。
レトロモダンとでもいうのだろうか、怪しい世界観に和風がよく合う。