ピアノの生徒さん。きーちゃん。六年生。
この夏、ほぼ一週間二回くらいの割で、
レッスンに来ていた。
学校の秋の音楽会がある。
そのピアノ伴奏者のオーディションが、
夏休み明けにあるからだった。
ピアノを弾ける子たちにとって、
学校の音楽会でピアノを担当する、というのは
憧れのポジションである。
しかし、夏休み前に渡された曲は、私が見ても
えーっ?こんな難しい曲、六年生に弾かせるの?と
驚くような曲で
実力者のきーちゃんでも苦戦する内容。
しかも、彼女と一騎打ちする相手は、彼女曰く
「すっごくうまいんだー」とのこと。
案の定、ノーミスでオーディションを弾ききったのに
先生が選んだのは、もう一人のほう。
きーちゃんは、「授業中に弾かされた、わりに簡単な曲。」を
担当することになった。
残念だったね。でも難しい曲を弾けるようになって
あなたのためになったと思うよ。
私の慰めに、「うん。」とうなづいた彼女は
気持ちを切り替えて、音楽会の一ヶ月後にある、
ピアノの発表会の練習に集中していた。
そんなある日、
突然きーちゃんのお母さまから電話があった。
「先生!娘が体育の授業で、腕を骨折しました!」
えええええ?
で、痛みは?様態は?
「ギブスが取れるのが、一ヶ月後です。
だから、ピアノの発表会はまにあいますが
学校の音楽会がぎりぎりです。十日くらい前。」
うわあ・・・
でも、きーちゃん、わりに簡単な曲って言ってましたね。
「そうなんです。
あの難しい曲だったら大変なことになっていました。
夏休み中がんばっていたので
オーディションに落ちた時は残念に思っていましたが
いまになってみると、こっちでよかったな・・って」
本当だ。
人間万事塞翁が馬 とはよくいったものだ。
あとは早く治ることを祈るのみ。
しっかりもののきーちゃん、
きっと、あっさり復活してくることと思います。
十月十七日 「ば」でした。
けがはこわいよお。