「た」の幼稚園では、十一月になると、

子供にないしょで、フェルトのキットが渡されます。

説明書通りに縫い合わせて、袋を作って

それを再び幼稚園に返すと、

年末のクリスマス会の時、お菓子を入れて

子供たちに返されるのです。

一年目は緑色でツリーの形、

二年目は赤の長靴でした。


「みんな同じ形なので、

自分のだと分かる工夫をして下さい。

名前を書いてもらってもいいし、

ワンポイントでなにか入れてもらってもいいです。

そう言われて、

器用でない私は、母に頼みました。

もともと手先が器用で、洋裁大好きな母、

受け取った私が、「え・・」と絶句するような

かわいい作品にしあげてしまいました。

ビーズや飾りを使って、

ツリーにたくさん、きらきら光る実が

なっているようにしたのです。


さて、クリスマス会当日、

袋を受け取った小さな(当時)「た」の眼が輝く。

「これ、ぼくの?」

「そうよ、おばあちゃんが作ってくれたのよ。」


袋をつかんだ「た」は、

隣にいた、なかよしのAちゃんのお母さんに

「これね、かわいいでしょ、

ぼくのおばあちゃんがつくってくれたんだよ。」

「へえー、よかったねえ。」


ま、小さい子がこう言ってきたら、

たいがい、こんな返事をしますよね。

ところが、「た」、

その隣にいた、まーくんのお母さんにも

「ねえねえ、見て!かわいいでしょ。

おばあちゃんがつくってくれたんだよ。」

そして、そのまま、どこまでも進んでいく。

まったく知らないお母さんたちに

「これ、ぼくのおばあちゃんがね・・・」


もういいって!




「た」は、もちろん、そんなことは覚えていない。

でも、今はタペストリーとして、

飾られている、二つのフェルトの袋を見て、

「本当にきれいだねえ。

おばあちゃんがつくってくれたんだよね。」と

毎年、しみじみ言います。



幸せな、クリスマスの思い出です。




十二月五日  「ば」でした。

中村勘三郎さんが亡くなられました。57歳。

ほぼ同年代で、常に私たちの先を

走り続けている人でした。

走って走って走って走って

人より早く、駆け抜けてしまったのだろうか。

あんまりだよねえ。つらいねえ。