
アジア研究基金主催、日本財団の後援により「新しいリーダーシップと平和と繁栄のための日韓関係」と題するシンポジウムが行われた。
このシンポジウムでは、「民主主義と平和」「競争と繁栄」「民主主義と地域協力」という3つのセッションが行われ、「民主主義と平和」のセッションには、民主党政権において内閣官房長官を務めた仙谷由人氏も出席した。
仙谷氏の発言を中心にセッションの様子をお伝えする。
仙谷氏が参加したセッション「民主主義と平和」では、日韓関係が悪化する中で両国の政治家がどのような役割を果たすべきかをテーマに議論が行われた。
このセッションは、延世大学教授の文正仁氏をモデレーターに、韓国からは吉チョン宇(セヌリ党国会議員 ※火偏に「正」)、林成浩(慶熙大学教授)が参加。
日本から仙谷氏に加えて慶応大教授の細谷雄一氏が参加した。
セッションの冒頭において、登壇者それぞれが現在の日韓関係における政治家の役割について意見を述べた。
その際、仙谷氏は以下のように述べて、日韓関係を報じるメディアの姿勢を批判した。
「現在なぜ歴史認識や竹島の問題をことさら大きく主張して、親韓、反韓のレッテルを貼っていかなければならないのか…。私は、そのことによって『売国奴』とまで言われています。これは、私自身がどうこうという話ではなく、同僚政治家、あるいは一般の政治に携わる人が、こうした傾向によって自主規制的に言動を控えていく風潮が最近は非常に強いのではないかと感じている。 メディアの世界では、今の私の立場ではお書きになる方はいないと思いますが、もし、私が昔のポジションでここまで言及すると数社に『こういう問題発言をした』と報じられ、インターネットで大騒ぎになって、それがまたマスメディアに報じられる。つまり、情報の商品化というか、切り売りで出来るだけおどろおどろしい見出しに仕上げていくという手法に、世論が影響を受ける。その影響を受けた世論の動向に迎合しようとする政治家が出てくる。この連鎖に対して、我々は絶えず警戒的に言動をしなければならない。」
また、現在の日韓関係については、アメリカ人歴史学者、キャロル・グラッグ氏が朝日新聞のインタビューにおいて、現内閣の対応が国際的な常識に反しているのではないか、と述べていることを紹介。
その一方で、「韓国において、絶えず繰り返される大衆と、我々から見ればそれに呼応しているように見える李明博前大統領の竹島訪問や朴槿恵大統領のアメリカでの演説等々もタイミングと状況において地政学的に無神経なのではないかとも思います」として韓国側の対応にも苦言を呈した。
そして、今後の日韓関係について「『未来志向』で、少し中長期的視点に立てば、経済的、政治的解を探すのはそれほど難しくないはず」と締めくくった。
その後のディスカッションでは、モデレーターを務めた韓国の政治学者・文正仁氏が仙谷氏に対して、「昨年の自民党政権発足以来、韓国に対し挑発的な発言が増えている原因は何だと思うか」という質問がなされた。
仙谷氏は、それらの発言は選挙対策に過ぎないとした上で、「政権発足後8ヶ月を超えていますが、対中、対韓国についても安倍さん自身は非常に抑制の効いた言動をされていますし、抑制の効いた対応をしていると私は見ています。海外から『日本が右翼化、軍国主義化している』というような決まり文句がでてくるのですが、これはまたあまりにも過大で極端な議論だ」と述べ、ここでも冒頭に指摘したような「メディアによる情報の商品化」が行われていると応えた。
重ねて、文正仁氏が最近、日本において憲法改正や集団的自衛権をめぐる議論が盛り上がっていることを指摘し、韓国側が不審を感じるのも仕方ないのではないか、とたずねると、 「東アジアの状況からすると、集団的自衛権の行使をもし憲法上の解釈として認めるということは、まさに韓国に対抗するために集団的自衛権を行使するのではなくて、日米韓の共同の自衛権の行使として、日韓の集団的自衛権の行使をすることによって北朝鮮に対峙する。あるいは中国と対峙しなければならない可能性がまったくないとは言い切れないという想定の元に考え出される概念が集団的自衛権の行使であり、韓国に対して、どこかと共同して軍事的に対抗しようという話になぜそこで摩り替わってしまうのか、わからない」と述べた。
また、上記の認識について苦笑しながら「僕は、そんなに安倍さんを擁護する必要はないんだけれども。日本全体としては、日韓関係においては、安倍さんであろうが、自民党だろうが自民党でなかろうが、そういう考えが一番大勢を占めているとお考え下さい」と付け加えた。
このセッションの中では、韓国の政権与党である保守政党セヌリ党所属の国会議員・吉チョン宇氏も「党としての公式見解ではなく、個人の意見である」と前置きしたものの、日韓の様々な問題について興味深い意見を述べた。
吉氏は、両国の関係において政治指導力が問題になることについて「韓国においては、多くの政治家が世論を反映する過程でいわゆるSNS、twitterやFacebookなどを通したポピュリズムに訴え、そのポピュリズムの犠牲になる、その悪循環を繰り返す政治環境の中に生きるからだと思います」と述べ、韓国政治にソーシャルメディアが影響を与えていることを指摘。
さらに、上述した文氏と仙谷氏のやり取りを受けて、日本の集団的自衛権について意見を問われると「集団的自衛権は日本自ら判断すべき問題であり、日本は普通の国を選ぶなら普通の国になる権利がある」と一定の理解を示した。
しかし、続けて「ただ国の戦略的判断はそれに伴うコストがあることは知るべき。
改憲や集団的自衛権のために日本国内でかかるコストがあるだろうし、周辺国、または国際社会との関係にかかるコストを考えた上でやったほうがいい」とも述べた。
また、昨年の李明博大統領の竹島上陸について意見を求められると、「大統領が独島を訪問したことについて『よくやったと思うのか』と問われれば、そうは思わない。
天皇に対する発言も『よくやったか』と聞かれたら、良くないと思う。
我々が日本の政治家らのいわゆる“妄言”を非難する理由も、それを単なるエピソードとしてみるのではなく、それが与える影響の大きさのためである。
私は、前大統領の行動にもの言う立場ではないが、それが両国関係に良い影響を与えたかといえば、私は否定的です」と自説を披露した。
そして、昨今問題になっている戦時賠償をめぐる問題についても、「民主化の過程で司法部が公正性を維持しているか、部分的にそうではないと思う。国民の情緒を反映し、または与野党や政権の状況によって、司法部がある程度均衡を保とうとするのが現実だ。徴用に対する賠償と、日本軍慰安婦への賠償問題は違う次元でみるべきだというのが私の考えです」と日本側が感じている韓国司法への違和感についても一定の理解を示す発言を見せた。
2013/09/09
[news.nicovideo]
