象と耳鳴り | バステトの本ブログ

バステトの本ブログ

本はネタバレしまくりなのでご注意を☆好きな作家は恩田陸、五條瑛、柴田よしき、今野敏、三浦しをん、よしながふみ、伊坂幸太郎、北村薫

むかしむか~し、かれこれ2年前ほどのことじゃった。
 その当時私は学生のバイト代(3万前後)での生活に慣れていたため社会人になってから急に給料が増えて、裕福になったと勘違いして浮かれておった(ほら、一年目って住民税引かれないし)。
 ある日会社帰りに本屋に寄ると本屋のオッチャンが手招きしているではないか。 なんじゃろうか? と寄っていくと薬局で立っているミニ象(サ●コちゃん)の指人形と一緒に 面白いから読んでみんさい! と薦めてくれた本がコレじゃ。 『象と耳鳴り』 
 私にとって〈象〉という文字が出てきたら買わずには入られない。
動物で何が好き?と言われて「猫と象!」と即答し、友人にドン引きされるほどに象が好きなんじゃよ。

 昔話のお爺さんのノリで読んでくださると嬉しいです。なんせ気分はオジイサンなんで!214円じゃ何も買えないので(昨日のブログ参照)今日は母から恵んでもらった赤いきつねがお昼ご飯でした (貧)足りないよ~(横に)育ち盛りなのに~!

象と耳鳴り 恩田 陸著 (伝祥社文庫) 『象と耳鳴り』
 内容:「あたくし、象を見ると耳鳴りがするんです」退職判事関根多佳雄が博物館の帰りに立ち寄った喫茶店。カウンターで見知らぬ上品な老婦人が語り始めたのは、少女時代に英国で遭遇した、象による奇怪な殺人事件だった。だが婦人が去ったのち、多佳雄はその昔話の嘘を看破した。蝶ネクタイの店主が呟く彼女の真実。そしてこのささやかな挿話には、さらに意外な結末が待ち受けていた…。(表題作)ねじれた記憶、謎の中の謎、目眩く仕掛け、そして意表を衝く論理!ミステリ界注目の才能が紡ぎだした傑作本格推理コレクション。

元判事の関根多佳雄が主人公のミステリ短編集☆
 恩田氏のデビュー作品『六番目の小夜子』の登場人物で関根秋君のお父さんです。『六番目の小夜子』でもちょっとイイ味出してましたけど、う~む。すごいな。関根一家!関根秋君の口からしか語られていなかった兄の春と姉の夏も大活躍!めっちゃ優秀な家族だ!元判事(多佳雄)、検事(春)、弁護士(夏)って・・・秋君は何になるのかなぁ。彼も相当優秀だったので何にでもなれるだろうな 
 え~っと。話がそれました。この小説自体は、多佳雄が人の言葉や態度を捉えて推理する という構成になっているので、スッキリ解決★ という作品を希望の方にはお勧めできませんが、読んだ後にどこまでもゾワリとした感覚をお望みでしたらオススメ致します(^^)

短編集の目次は→曜変天目の夜/新・D坂の殺人事件/給水塔象と耳鳴り海にゐるのは人魚ではない/ニューメキシコの月/誰かに聞いた話/廃園/待合室の冒険/机上の論理/往復書簡/魔術師 (太文字は私の印象に残った物語)

 曜変天目の夜
 短編集のトップバッターに相応しい作品!ザワリとしました!
 -きょうはようへんてんもくのよるだ
 関根多佳雄が妻の桃代と国宝の茶碗を見に美術館に行く、そこで貧血で倒れたお年寄りに遭遇するところから連想に連想が重なって、美術館帰りに娘の夏と三人での食事中にした会話も連想に拍車をかけ、十年も前に謎の自殺を遂げた多佳雄の知り合いの法学者の真相にたどり着く。
 自殺する前、多佳雄は彼の自宅で会って話をしている。 一度見たり聞いたりすれば覚えてしまう為、仲間から”住所録いらず”と呼ばれていた彼が何度もお気に入りの紅茶ポットの蓋を開け、 お、もう空か と言うのを多佳雄は何気なく聞いていたことに思い当たる。

 "忘れる" という一言にこんなに恐怖を感じたことはこの作品を読むまでありませんでした。 

 給水塔
 時枝満に誘われ、人食い給水塔と噂のある給水塔に多佳雄は向かう。この給水塔には夜になると鬼が出て、小学生の失踪事件や主婦の転落事故など不可思議な事件が立て続けに起こっているというのだ。時枝満が話してくれるうわさ話から多佳雄は推理を始める。
 多佳雄が推理を時枝に披露し終わり、その噂事態が時枝の作り話だったと明かされる。憮然とする多佳雄、そんな多佳雄の機嫌を取るように時枝は、来た道を戻って駅で飲もう と誘う。
多佳雄は何の気なしに訊ねる。
この給水塔の反対の道はなにがあるのか と。
 時枝の顔が一瞬強張るが、何もないから早く駅に戻りましょうと多佳雄を急かす。 しかし時枝の肩越しにチラリと見えたもの。白い布看板に毛筆の字-
 この看板を使用するのは警察以外にあり得ない。そう。時枝の作り話に登場した小学生の失踪事件。
 駅に向かいながら多佳雄はぼんやりと考える。 -埋まっているのだ。あの給水塔に新しい死体が・・・

 水のある場所でとろりとした恐怖を描く恩田氏の作品には毎度全身に鳥肌が立ちます。怖かった。

 象と耳鳴り  -あたくし、象を見ると耳鳴りがするんです-
 多佳雄がバーで聞いた不思議な老女の話。老女が去っていった後、物語の真相をマスターに訊ねる多佳雄。マスターから話される真相と、幼い頃に体験した恐ろしさとその体験を無意識に忘れようとした老女の幼少時代がなんとも言えなかった。何回も読み直しましたが、読み返すたびに恐ろしくて背筋が冷たくなりました。それほど印象的な話しだった!

 海にゐるのは人魚ではない
 -海にいるのは人魚じゃないんだよ。海にいるのは土左衛門さ-
 多佳雄と春が二人で旅行に行った時に多佳雄の横を通り過ぎた小学生の男の子の会話から推理するというもの。<吸水用>や<象と耳鳴り>と同様、多佳雄が人の言葉や態度を捉えて推理をし出す構成になっているため、完全に解決!という話しではありません。
 ただ、<北海の海>の詩が効果的に使われていて、印象的な物語でした。
在りし日の歌より
「北の海」

海にいるのは あれは人魚ではないのです。
海にいるのは あれは 浪ばかり。
曇った北海の空の下 浪はところどころ歯をむいて
空を呪っているのです。 いつはてるとも知れない呪。
海にいるのは あれは人魚ではないのです。
海にいるのは あれは 浪ばかり。