彫像や壁画に見られる王の持ち物や装身具、壁画について書きます。おねがい

 

 

王は、人間と神の仲介の役割を果たし、毎年繰り返されるナイル川の氾濫や、太陽が天に昇る営みと同様に、宇宙の秩序にとって中心的な役割をになっていました。

 

宇宙における王の役割は、天の支柱を支え、つねに存在する混沌としたカオスの脅威に対して、秩序と安寧を約束する事でした。

 

神々と人間の世界を仲介する王が居なければ、神々はエジプトを置き去りにし、国は朽ち果てる事になります。その為、王は神殿を造営し、飾り、供物を捧げました。神々はその見返りに、エジプトに繁栄と平和をもたらしました。

 

王は人々の前に姿をあらわす時、特別な衣装をまとっていました。残された図像から多様な王冠を見る事が出来ますが、いくつかの帯状冠や頭巾を除いて発見された物はありません。そのため材質や大きさに関してはっきりと分かっていません。それぞれの冠は、神と王を結びつけ、神々から地上の王に権威が行こうされるのを象徴していたと考えられます。

 

神殿の壁画には神々に供物を捧げる王、戴冠式や祭儀、葬式、敵から国を守る王などが描かれています。全ての命ある王はホルスとなり、死後オシリスとなります。場面によって被る冠が変わるので、壁画や像を見て、こんな意味がある冠や杖を持っているんだってさらっと読んで頂けたらと思いますおねがい

写真はアビュドスのセティ1世葬祭殿やラムセス2世葬祭殿のを使用しました。

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白冠(上エジプト王の象徴)(White crown)(Hedjet Crown)

古代名『ヘジュト(白)(Hedjet)(ḥḏt)』『シェマァ・ス(上エジプトの冠)』『ウレレト(偉大なる冠)』と呼ばれていました。白冠をはじめ、冠は遺物として発見されていないので、その素材については分かっていません。

この王冠は先史時代(0王朝)サソリ王が被っていました。サソリ王は国家が統一される前の支配者です。(前31世紀頃)

第1王朝1代目ナルメル王のパレットにもこの冠が書かれています。

 

上下エジプト名の『ネスウ・ビト』のネスウはファラオの王権が持つ『永遠的』側面を表し、『ビト』は地上における王権の顕現を表したものと言われています。同じことで、『白冠』は単なる地理的な意味ではなく、王権の永遠性を意味し、『赤冠』は、その地上における顕現を表していると言われています。

その為、王の妻の称号に第12王朝から第18王朝初期まで『白冠と一体となる者』が使われるようになりました。

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赤冠(下エジプト王の象徴)(Red crown)(Deshret Crown)

『デシェレト(赤)(Deshret)(dsrt)』『メヘ・ス(下エジプトの冠)』『ウレト』と呼ばれていました。

ナルメル王のパレットには、この冠が書かれています。

形は、低い土地を表していると思われます。

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二重冠、プスケント(上・下エジプト王の象徴)(Double crown)(Pschent Crown)

『パ・セケムティ(2つの力強きもの)(shmty)』と呼ばれていました。

統一した二国の支配者としての王を示しています。

第1王朝4代目ジェト王(Djet)(Wadji)(統治年数10年)(BCE 2999-2977)

セレク(王名)の上に二重冠を戴いたホルス神のハヤブサが止まっていると報告されており、二重冠の最古の例と考えられています。

王権の象徴であるホルス神や、宇宙と関連するアトゥム神などの頭上にも描かれています。

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ネメス頭巾(一般的な頭巾)(Nemes headdress)

王だけでなく、貴族も被りました。王が被る場合は額に王権の守護神ウラエウス(コブラ)や上・下エジプトの象徴であるネクベト女神(ハゲワシ)とウァジェト女神(コブラ)が付けられました。

第3王朝ジェセル王の像に初めて見られます。カツラの上に被っていました。第18王朝からはこれに他の装飾を施しました。

ウアジェト女神(Wadje-コブラ)は下エジプトの守護神で、頭上に鎌首をもたげたコブラの赤冠を戴いた姿で現され、ネクベト女神と組み合わされて上下エジプト両国の支配者である王が登場する壁面の装飾に使用されたり、王の装身具や家具などにも描かれます。

 

コブラのウラエウスと混同され、同じように鎌首をもたげたコブラの姿で現されます。

下エジプトの守護神として扱われる事がありました。ウラエウスとはギリシア語で『立ち上がる者』という意味で、古代エジプトの肩書では『ウェレト・カウ(魔女?)』と呼ばれる事があり、中王国時代以降になって、王のハチマキや王冠の額部分に王を守護するものとして表されました。

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帯状冠(ダイアデム)セシェド帯状冠(Seshed)(sesed-circlet)(ssd又はmdh)

王だけでなく、貴族たちも身に着けました。王族はウラエウスが取り付けられた金属製の冠を着用しました。貴族はウラエウスの飾りがついていません。

 

王は日常的な頭飾りとして身につけていたと思われます。

 

第4王朝1代目スネフェルの治世以降見られます。カァト頭巾やアフネト頭巾と合わせても使用されました。

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カァト頭巾、アフネト頭巾(Khat, Afnet)(Headdresses)

白い亜麻布製と考えられています。一枚の布を頭部の下の所で固定されています。プリーツやストライプの模様は有りません。

カァト頭巾の後ろに尾状の下げ飾りのついたものをアフネト頭巾といいます。

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キャップ冠(Cap Crown)

古王国時代から使用されました。第2中間期からキャップのシンボルとなったようです。

キャップは装飾なしまたは、線または円で装飾されており、ウラエウスと一緒に着用されました。 青または金色で表現されています。

ツタンカーメンのミイラにはこれが被せられていました。

青いキャップはプタハ神が装着しています。

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青冠(戦場の場面など、軍事面での王権を示すための冠)(Blue crown)(Khepresh)(hprs)

『ケペレシュ』と呼ばれていました。中王国時代以降、第2中間期13王朝の石碑に初めて見られます。

しばしば戦場の王の頭を飾り、ヘルメットの様な形をしています。革製と考えられます。表面にファイアンスの円盤が巧みに飾られているのが特徴です。

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アテフ冠(Atef crown)

白冠、またはパピルスの茎を束ねたものの脇にダチョウの羽、太陽円盤を組み合わせたもの。オシリス神やソカル神、ヘリシェフ神などがかぶり、人の場合は神殿の祭司のものとされていました。王が被る場合も、神殿の儀式などで神官の役を担う場面などで見られます。オシリスと結びつき、宗教的な役割を果たす時に王が被っていたのは、このアテフ冠でした。

 

第5王朝2代目サフラー王から見られます。

新王国時代以降、太陽円盤とウラエウスが描かれたものもあります。

(アビュドスのセティ1世葬祭殿より)

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ヘムヘム冠(Hemhem)(hmhm)(左)

アテフ冠を3つ連ねたもので、同じく神聖を強調したもの。太陽円盤、アメン神などの羽根、生殖、豊穣をあらわすヒツジの角などが組み合わされています。

第18王朝アクエンアテン王の治世で最初に使用され、重要な儀式のときに使用されました。

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二重羽冠(The Two Feathers)(swty)

ヒツジの角と聖なる2枚の羽根飾りがつけられた冠。一対のダチョウ又はハヤブサの羽根で作られたと思われます。

第4王朝1代目スネフェル王(BCE 2613- 2589)の治世から見られます。

第6王朝のピラミッドテキストにはアンジェティ神(Anedjti)(ˁnḏtj )が二重羽をつけています。

アメン、ミン、モンチュ神などの神々やタァテネン神なども装着しています。

新王国時代はこれにウラエウスや太陽円盤が装着されました。

戴冠式で二重冠の役割を示唆しています。

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アメン神の冠

平な帽子に、聖なる2枚の羽根飾りがつけられた冠。

王が着用する場合は、王とアメン神を関連させ、神の保護の下で統治を正当化させようとしていることが示唆されます。

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ダチョウの羽根(Ostrich feather )

ダチョウはシュウ神が着用する創造と光の象徴となっていました。

マァトの羽根は真理、秩序、正義を表しています。

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王妃の冠(Crown of the Royal Women)

王妃の一般的な頭飾りは、古王国以降女神ネクベト(ハゲワシ-上エジプト)の頭飾りを付けていました。

第13王朝以降、これに二重羽根が加えられました。

 

第18王朝以降ハトホル女神の象徴である牛の角と太陽円盤とウラエウスが装着したものも被られました。

アメンヘテプ3世以降、牛の角からガゼルの角と太陽円盤と聖なる羽根を合わせた物が着用されるようになります。(右)

これは、シュウト冠と言います

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かつら

かつらの上にウラエウスを装着した壁画はよく見られます。

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イウンムテフ

ホルス神の1つの形で、司祭の役割をしている壁画なんですが、側頭部の髪を編んでいます。

これはかつらについてるのかな?気になったので、王じゃないけどUPしちゃいました。

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腰布(シェンジュウト)(shendyt)

一般的な王の衣装です。公式の場で用いられました。亜麻布。

ナルメル王のパレットには、シェンジュウトと呼ばれる短いキルトの両端を前で交差させ、ベルトを付けた王が刻まれています。キルトを身に着けている王の最初の記録です。

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装身具

①ヘカ - 牧童の杖であり、上エジプト、牧畜民の王の象徴

②ネケク - 農耕の殻竿であり、下エジプト、農民の王の象徴

③セケム笏又はアヴァ笏 - 王権の象徴

④ヘジュ - こん棒(メイス)

①ヘカ(heka)(crook)

握りの部分がカギ型に曲がった杖の事で、上エジプトの王権を象徴するものの一つです。ネケクが農民の殻竿が原型であるのに対して、ヘカは牧畜の杖で、王や冥界の王オシリス神はこれら2本を1組に手にした姿で表されます。

 

②ネケク(nekhakha)(flail)

脱穀の際にもちいる打ち棒で、農耕がさかんだった下エジプトを象徴しています。

 

③セケム笏、アバ笏(sekhem , aba)

セケム笏は『力を持つもの』とか権力を表したり、司令官や有力者とかにも使われるので、王だけでなく役人も手に持っている壁画があります。オシリスはしばしばグレートセケムと呼ばれ冥界の神の象徴として使用されたので、アヌビスのエンブレムとして使われました。これはアビュドスのセティ1世。

セケム笏とはTure Egypt

アビュドスのエンブレムに供物を捧げるセティ1世

アビュドスのラムセス2世葬祭殿。

王が持った時は通常右手にセケム笏、左手には棍棒か香炉を持っています。 高官の場合は右手にセケム笏、左手に杖などを持っています。有名なのはセンネジェムの墓の壁画です。成功した人が権威ある立場を表すためだそう。

④棍棒(左)

棍棒はサソリ王(第0王朝)やナルメル王(第1王朝)の棍棒頭が出土されています。

写真右は彎曲したケペシュ刀。よく壁画に描かれています。

 

⑤ ジャム杖

⑥ ウアス杖

⑦ メケス杖 - 統治の象徴

⑧ アブゥト - 蛇採り杖

⑨ アウト - 統治の象徴

 

オシリス神は左手にヘカとネケク、そして右手に統治の象徴である⑨アウトを持っています。

 

古代の服装や色彩についてはこちらのHPをご覧ください。

あと、ツタンカーメンや王の服装についてはまた記事を書きます♪