とうとうその日はやってきてしまった…。
ミューザ川崎シンフォニーホール。その威容に圧倒される思いがする。
前日のゲネプロがメタメタ
だったこともあって、初めてのホールに対する不安がいっそう増していた。
中に入ると、ステージ裏に『オーケストラ・ホワイエ』というスペースがあって、イスとテーブルが置いてあり、寛げるようになっている。
楽屋も広くてゆったり。荷物を置く棚もたくさんある。
なるほど、よく考えられている。
普通のホールといえば…
・楽屋が狭くて荷物の置き場所に困る
・それどころか、お弁当を食べているすぐ横で着替えなくてはならない
・ステージ裏は機械でいっぱい
・楽屋から狭くて長い通路を通って、暗い舞台袖で待機する間に緊張してしまう
というのが一般的なのだが、ここは全然違う。
聴きに来たお客さまだけでなく、演奏する者もリラックスしていい気分になるように配慮が行き届いている。
準備は着々と進んでゆき…
リハの時間が刻々と迫ってくる。
自分の席からの眺め。
ステージが低くて客席が近い。聴衆と一体感が得られそうだ。
ウォーミングアップを兼ねてステージ上で吹いてみた。
上の階の席まで届いているのかどうか…まったくわからない。
まぁなんとかなるだろう。きっと聴こえるさ…。
浅井美紀さんが登場して弾き始めると、周りの空気がサッと変わった。
もうこれだけで感動。
ステリハが始まると、いままでの心配は嘘のように消えた。
ほかのセクションの音がとてもはっきり聴こえるから、昨日のように「どこに合わせたらいいのか迷える
子羊状態」になることはない。
試しに古風なメヌエットをけっこう攻めの姿勢で吹き込んでいったが、フォルテになっても音が飽和することなく、かといって吸い込まれてしまうでもなく、いい感じに響いてくれる。
きっと客席で聴いたらもっといいに決まってるだろうけど、演奏者にとっても非常にありがたい。
いいホールとは聴きに来たお客さんだけでなく、演奏する側にもやさしいものなのだということがわかって、目から鱗だった。
小組曲はオーケストラ・ホワイエで聴いていたが、上手過ぎ
としか言いようがない。
リハもたけなわ、オルガン付きではかなり本気に近く(かといって潰れない程度に)吹いてみた。手ごたえ十分
といったところ。
かの有名なⅠ楽章後半のAdagioでオルガンが入ると、つま先から背中を伝って頭のてっぺんまで快感が突き抜けるのを感じた。voix celeste(ボワ・セレスト:オルガンの「天の声」音栓)最高
これだけで昇天
しそうだ。
その後も順調に進んでゆき、まるで昨日のダメダメ
なゲネからは全く想像できないくらいのV字回復
ぶりであった。
(後篇に続く)