雨後の出来事の話。(再アップ) | 京都山科の釣具屋・バスフィのてんちょのブログ

雨後の出来事の話。(再アップ)

 

ウェーダーで浸かって釣りをするとき、僕は,フローティングベストを着用することにしています。

(すみません、去年からかな、腰つけの自動膨張にしてます。)

着用!

川や海の釣りでは、もちろんのことなのですが、バスのオカッパリは、着用してる人は少ないです。

その昔、オガケンさんと某ダム系河川に釣りに行ったときに、オガケンさんにも着用を勧められましたし、僕は、釣具屋なので、着けなきゃいけないのだろうなーとは思っていたのです。

今回は、僕にフローティングベストを着るきっかけをくださった人が、僕に「着用を広めてください!」というお願いをするにいたった、その経緯の話です。

(下記はその方からの手記です。)

 

8月の長期連休初日(8/12)に和邇川で大きな事故がありました。

 


今年の連休は琵琶湖に行かず、実家にまっすぐ帰省するつもりでしたが、連休直前に
新しいリール(アンタレスDC)を購入したのと、琵琶湖で知り合った私の友人が琵琶湖入りしていたこともあって、12日、13日の予定で琵琶湖入りしました。

 

当日、朝一から合流し二人そろって和邇川でヘビキャロを楽しみ(マメがよく釣れました)10時頃、友人は「北にもどる」と言われ別れ、私はそのまま和邇に残留。

 

 

休憩後、お昼頃から再び浸かる。

 

この時点で約15人くらいのウェーダマンが入水していましたが、13時頃、雷がゴロゴロと鳴りだし、雲行きもかなり怪しくなった為、私を含め全員撤収。

 

案の定、激しい雷雨と突風が吹き大荒れとなりました。

 


そのまま、帰る者、車中に退避する者がいましたが、私はこの大荒れの直後がチャンスと思い、車の中で嵐がやむのを待ち一番に出る事を考えていました。
ちなみに、この時の雷雨は記録的なもので、見える所に落雷していました。大津ではあちこち火災も発生していたようです。

 

15:30頃ようやく雨風がおさまり、速攻で支度をし出陣。
てっきり、一番乗りと思いきや、河口の左岸(駐車場側)に二人の釣り人。
丁度、そのうちの一人がビックベイトで軽く50upを釣りあげていました。
やはり、思った通り状況は好転しているようです。

 

この時点で川は先ほどの大雨で濁流となっており、河口なので水位の上昇はないものの、急流となっていました。

濁りを避けるため、川を渡り右岸側のサンドバーに行こうと考えた私は慎重に渡河。
自慢するわけではないですが、私は毎週、和邇に通っており、サンドバーへのルートと底の状態も全て把握。
しかも、この程度の流れは何度も渡っており、何の問題もなく渡りきりました。
もちろん、渡る前には流れの強さや水温、濁り、風向き、上流からの障害物・・・等、色々確認して「行ける!」と判断したのですが・・・。

 

渡りきって早速、第一投。

 

しばらくすると、左後方から「○○さん!」と人を呼ぶ声。

振り向くと、先ほどの二人組みのうち、一人が私のすぐ後ろに、その向こうの最も流れが強い所にもう一人が水面から首だけ出してもがいていました。

一瞬、状況がよく解からず、ふざけて泳いでるのかと思いました。

「お前、何しとんねん!」ともう一人の声。
ビックベイトを彼に向かって投げていましたが、うまく届きません。
その間にも、流れに乗ってどんどん沖に流されていく・・・。
もうそこは人の背が立つ水深ではありません。

ようやく、事態を飲み込めた私はヤバイ!と思い大声で「ウェーダーを脱げ!」と指示しました。
と、同時に回りを見ましたが当時、現場には我々三人のみ。
浮き沈みしながらあっという間に沖に流れていく・・・。
もう、岸からはどうしょうもありません。

ずっと向こうの水泳場に人影が見えたので大声を出し助けを呼びましたが、なかなか気づいてくれません。

そうこうしているうちに、沈んでしまい、見えなくなってしまいました。

この間、ほんの2~3分の出来事です。

 

その時、沖にクルーザーが通りかかり、一旦は通りすぎたものの、我々に気づいてくれて近寄ってくれましたが、大型船のため、あまり接近できません。

 

事情を話したところ、水泳場のマリーナまで全開で走ってくれました。

すぐに、水泳場からライフセーバーの方とボートが来てくれましたが、すでに・・・。

 

そこから、水泳場の人が警察と消防に連絡。
この時、時計を見ましたが15:50分でした。おそらく、流されてから10分後くらいだと思います。

 

しばらくしてボートが竿と自力で脱いだと思われるウェーダーを見つけましたが、本人は見つからず。


まもなく、警察と消防が駆けつけ、あたりは騒然としました。

私も警察の事情聴取を受け、一部始終を話しました。私の事情聴取が終わった頃、消防の潜水隊二人が
潜りましたが発見できず。
私ともう一人で沈んだと思われるところを詳しく指示し再び捜索。
今度は非番の隊員も加わり6名で潜りましたが、激しい濁りと深い水深の為、視界0で発見出来ませんでした。

 

そのうち、日没となり捜査は打ち切り。翌日、再捜査ということになり、私も引き上げてきました。

 

 

以上が、あの事故の全てです。

 


私もショックを受けましたが、連れの人も相当ショックを受けておられました。
「アイツの家族になんて言ったらエエんや・・・」
という言葉が印象的です。
彼に何も言ってあげる事は出来ませんでした。


もしかしたら、あの時、私が川を渡ったのを見て、「なんだ、行けるじゃん!」と彼らも渡ろうとしたのかも知れません。
だとしたら、私にも責任があります。
あの状況だと普通は行こうと思わないでしょうからね。

私が立った所と彼らが最初に立っていたところを最短で結ぶと、和邇で最も危険な所を通る事になります。

もちろん、私は迂回したのですが、濁りの中、あまり地形を知らない人だとまっすぐ来てしまったのかも知れません。
そこで深みと流れに足をとられ、転倒・・・ってことになったのではないでしょうか。
実際、転倒したところは誰も見ていないので、わかりませんが・・・。

 

翌日の午後、私の自宅に滋賀県警から電話がありました。

 

今日の午前、水深7.7メートルの湖底から遺体で発見されました。

それと、家族の方が私にウェーダーを脱ぐようにアドバイスしたり、助けを呼んだことについて、お礼がしたいと言っておられますが、どうしますか?という内容でした。

お礼といわれても・・・。
助けたわけでもないし、家族の人にかける言葉も見つかりそうにないので丁重にお断りしていただくようにしました。
警察の人も、家族の人も今は少し取り乱しているのでそのほうが良いですね。との事でした。
こんな事を言われるとますますブルーになってしまいます。

 

あの時、ウェーダーを脱がしたことは本当に正しかったのだろうか?

 

生きるか死ぬかの状況で私の言うことを信じウェーダーを自力で脱いだと思われますが、
もし仮に少しでもウェーダー内にエアーが溜まっていたら、たとえ、逆さ吊りで意識も無い状態でも
ウェーダーの浮力で浮いたかも知れません。

浮きさえすれば・・・。

10分後には救助のボートが来ていたので人工呼吸等で助かったかも・・・。

すぐに沈んでしまったのもウェーダーを脱ぐ為だったと思われます。
実際にウェーダーは浮いてきてすぐに見つかりましたので。


後で分かった事ですが、ウェーダーの下はジーンズを履いていたようです。
ジーンズが水を吸ったら・・・。
どっちみち、泳ぐことは出来なかったかも知れません。


ウェーダーがなぜ危険かというと、二通りの考え方があって、一つは転倒した際にウェーダー内のエアーによって強制的に逆さ吊りになってしまうから・・・という考え方と、もう一つはウェーダー内にガバッと水が入ると身動きが出来なくなるから危険だというものです。

前者の考えは腰まで水に入れば実感出来るのですが、ダブダブのウェーダーでも水圧でピッタリと体に密着してしまいます。
ですから、空気で逆さ吊りになるより、水が入ることの方が危険だと普段から考えていました。

腰のベルトで絞るのもできるだけ水の浸入をふせぐ為にと思っていました。

今となっては、あの時の状況で正しいのはどちらか?は判断出来ませんが・・・。

とにかく、今回のことで思ったことは、沈んだら最後ということでした。
浮いていれば、どんな状況でもなんとかなる可能性はあるのですが、沈んでしまってはどんなに早く助けが来ても間に合いません。

私を含め、和邇でウェーディングしている連中は誰一人ライフジャケットを着用している人はいません。
あの時、ライジャケを付けていれば、笑い話で済んだハズです。

皆様も、釣りをする時はボート、陸に限らず必ずライジャケを着用してください。
それと、何かあった時はどうするべきかを常にシュミレートしておくことが大切かもしれませんね。

30年(事故当時)も釣りをしているといろんな事がありますが、今回のは極めつけです。
自分もかなり危険は事をやっているという自覚はあり、いつか、自分がこういう事になるかも知れないと思っていましたが、まさか、他人が・・・という事は想定していませんでした。

 

助けを求めて浮き沈みする姿が今でも目に焼きついていて、しばらくバス釣りに行く気にはなれません。
人が亡くなる時って意外なほどあっけないもんですね。

 


以下に京都新聞のインターネット版に出ていた記事を貼っておきます。

                              長文失礼しました。

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バス釣りで沖合に流され行方不明
琵琶湖 枚方の男性
12日午後3時40分ごろ、大津市和迩南浜の琵琶湖で、釣りに来ていた大阪府枚方市の
ガソリンスタンド男性店員(27)が沖合に流され、行方不明となった。

大津北署によると、男性は午後3時半ごろから、和迩川の河口付近で、友人(27)と腰まで
湖に入ってバス釣りをしていた。直後に、友人が沖合約30メートルに流された男性の
「助けて」という声を聞いたが、すぐに沈んだ、という。

滋賀県警は警備艇などで一帯を捜索したが、男性を発見できず、午後8時5分に捜索を打ち切った。
13日午前8時から再び捜索する。

 

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ということです。

皆さんも少し考えてみてください。