最近は忙しくてなかなか更新できずにいました。
今日はDNAの複製についてお話ししていきます。
DNAの構造については、生物用語⑴のほうでお話ししましたので、省かせていただきます。
1,DNAの半保存的複製
DNAは二重らせん構造をしています。
二本鎖のDNAはDNAヘリカーゼと呼ばれる酵素で結合(水素結合)が解かれます。
よく説明上一本鎖になると表現されていますが、実際完全な一本鎖になるのではなく、解けた部分から徐々にDNAは複製されていきます。
(ここから少し難)
DNAには方向性があり、片方の末端が5'とよばれ、もう片方の末端が3'と呼ばれます。
(この数字は有機化学をやっている方はご存知だと思いますが、炭素Cの位置番号です)
そして、二重らせん構造をしているDNAは互いに逆平行に結合しています。
つまり、左側に片方の鎖の5'があれば、もう片方の鎖は3'が左側にあります。
そして重要なのは、DNAの複製は5'→3'の方向にしか、複製できないということです。
先ほども説明した通り、DNAはDNAヘリカーゼによって解かれていきます。
解かれた二本鎖のうち5'が末端にあるほうは5'→3'の方向へ、つまり解かれていく方向にドンドンDNAを複製していくことができます。これをリーディング鎖といいます。
しかし、3'が末端にある鎖はどうなるのでしょうか?
これは長い間疑問でした。
しかし、1966年に日本の岡崎令治博士によって解明されました。
5'→3'方向に合成を進めていくのをリーディング鎖というのに対し、それと逆向きに合成を進めていくのを鎖をラギング鎖といいます。
このラギング鎖は3'→5'方向にヌクレオチド鎖を伸長していくのですが、何度も言うようにヌクレオチド鎖は5'→3'の方向にしかヌクレオチドを合成できません。
ではどのようにしてラギング鎖はヌクレオチドを合成しているのでしょうか?
それは、開かれた二重らせんの根元に近いところで合成が開始し、より開くとまた根元から合成を繰り返すのです。
そうすると短い鎖(短鎖DNA)がいくつもできます。
この短い鎖を最終的にDNAリガーゼとよばれる酵素により繋がれていきます。
このようにして、ラギング鎖は伸長していくのです。
そして、この短鎖DNAを岡崎令治博士の名を取り、岡崎フラグメントといいます。
【用語解説】
●RNAプライマー
DNA合成の起点となる4~10塩基ほどの小分子。
岡崎フラグメントはこのRNAプライマーを起点に開裂部分からDNAを合成していきます。
この起点となるRNAプライマーは最終的にDNAにおきかえられます
よく勘違いされているのが、すべてのRNAプライマーがDNAに置き換えられるというわけではありません。
リーディング鎖の5'末端とラギング鎖の5'末端はRNAプライマーがDNAに置き換えられず、複製のたびその部分だけ短くなっていきます。
DNAが複製の度に短くなっているなんて衝撃の事実ですよね
これは次にお話しします。
●プライマーゼ
RNAプライマーを合成する
DNAヘリカーゼとプライマーゼは複合体を形成している
●1本鎖DNA結合タンパク質
解けた1本鎖DNAの状態を安定させる