最近真紀の周囲は変化が多い。

まわりの誰もが気づかないうちに真紀の同期の福田君と後輩の綾ちゃんが婚約したし、あの真紀の苦手だった元上司は取引先から数百万円のバックマージンを取っていたことが会社に摘発されて逮捕された。

ギャンブルにはまっていたそうだ。

悪いことをしていたから精神が安定せず、部下にひどい態度をとっていたらしい。取引先ももう不正なことはできないからと通報があって発覚した。


社内の空気はこの事件でどんよりとしたが、悪いことが発覚して膿みを出せてよかった。

とにかく自分の会社の心証をよくするために社員は気を引き締めようとしている。


例えば車を運転していて、スピード違反で警察に捕まったとき、多くの人は運が悪かったと思うだろう。罰金も取られるし、減点もされるので本当にいやな気持になる。

けれど別の見方をすれば、小さく済んでよかった、大きな事故を起こす前に注意されてよかったと考えた方がいい。


あの上司は本当にいやな人だったけれど、会社が大きな損害を受ける前に発覚してよかったのだ。

あの上司はこれから誰にも信用されずに生きてゆくしかないだろう。

けれどあの上司にしてみれば何億もの不正なバックマージンを取る前に発覚したからまだ返済できるかもしれない。

悪いことが発覚するのは早い方がいいのだ。