ゴールデンウイーク前も梨花の登山用品売り場の仕事は忙しく、月間の売り上げの記録を更新した。
私生活はリア充とは言えないけれど、仕事の調子がいいので気分もいい。
時々変なお客は来るけれど、忙しいとあちこちで呼ばれてしまうので一人のお客にずっと応接できないからつきまとわれることがないのだ。
この前の旅行で知り合った女性二人も約束通り店に来てくれた。
「この間は楽しかったわねー。梨花さん、私達トレッキングから始めたいけれど、どんな風に始めたらいいのかしら?初心者向けのコースや用具を教えてもらいたいの。」
と、子育ての終わった主婦と同級生の独身女性が尋ねたので、
それに見合った靴や洋服などをコーディネートして提案した。また近郊にある初心者向けのトレッキングコースも教えてあげた。
二人は梨花の勧めた品物を気に入ってくれて気前よく購入してくれた。
子育ての終わった主婦など中年女性は趣味や生き甲斐を模索しているようだ。
「私たちは今はまだ親の介護がないから動ける、でもいつ親、もしくは自分が病気になるかわからないから、動けるうちに動きたいの。きれいな景色を見たり、楽しんで悔いのない人生にしたいの。」
と彼女たちは言った。
40代半ばになると自分の余命もなんとなく意識するし、親の介護があるとなると自分の動きたいように動ける時間は限られる。
そう思うと梨花も限られた時間を考えなきゃいけないと思う。
(つづく)