4月は美加にとってはちょっと辛い月だった。
河井常務は他の担当している部門で忙しく、出張ばかりで美加の部署にはほとんど顔を出さず、仕事もうまくいきかけていた相手先との契約をかわせなかった。
そんなことはずっとわかっているつもりだったけれど、孤独感や不安感といつも一緒にいる感じだった。
私生活でも母と些細なことでケンカしてしまい、しばらく口をきかなかった。
けれど5月になると美加の気持も落ち着いて、会社の人達も友人も美加にやさしい言葉をかけてくれたり、冗談を言って笑わせてくれたりした。
仲良しの美咲も食事やミュージカルに誘ってくれて、4月の落ち込みを回復させてくれている。
そんなときに美加の部署には新入社員の男子が配属されて、その子がかわいくて面倒みてやりたい気持ちになった。
わからないことを聞きやすいのか美加に聞いてくるので、できるだけ丁寧に対応しているつもりだ。
その新入社員の歓迎会も行い、部署の全員が楽しんだ。
また部署の雰囲気は少し変化している。
常務は相変わらず美加の部署には来れないが、美加は新入社員のお世話で気が紛れている。
可愛げがあるので、この人は出世するタイプなんじゃないかと思う。