陽華の母の腫瘍は良性だったが、亮太を紹介する時期がきたのだと感じ、両親と亮太を会わせることにした。

母はフェータルな病気でなかったので安心して機嫌がよかったし、父もニコニコしていた。

母は亮太に

「どうかこの娘をよろしくお願いします。」

と頭を下げていた。

陽華はわだかまりの一つが解けたような気がした。


しばらく母とはぶつかり、お互いに避けていたが、親子の縁はどんな確執があっても切れないものだ。

思えば思春期から陽華は母との関係に悩んでいた。

お互い気が強く、母は陽華を自分の言いなりにしようとしたし、陽華は母の言いなりになんかなりたくなかった。

母は自分が看護師をしていたから、陽華にも看護師の道を目指せと言っていたが、陽華は夜勤を終えて疲れた母の顔を見て娘として辛かった。

看護師という仕事は立派だけれど、家庭を持ち、子供を持ったらその負担は重い。

母は陽華が小学校の5年の時に夜勤のある仕事に就いたが、母のいない夜は寂しかった。

だから自分の子供にはいつも夜にいてやりたいと思っていたので、あえて陽華は事務員になった。

会社員になっても紆余曲折があり、何度か転職して今の仕事に就いている。

今の仕事はいろいろなお客様に会えるので苦労もあるが、楽しみもある。

幸せに暮らしている人には何か共通しているものがあると思う。

(つづく)