正月二日、桃子は吉田君と初詣に行った。
どの神社も混んでいるのはわかっていたので、元旦は家でのんびりして家族とお節料理を囲んだ。
桃子の家は元旦はお屠蘇で乾杯しお節料理を食べる前に父が一説ぶつのが習慣で、桃子が受験を控えた年は
「桃子は元気で受験をがんばって」とか、
就職を控えた年は
「今年から社会人だね。無事に成長してうれしいです。」とか話したが、
ここ数年は
「明けましておめでとう。みんな、病気をしないように気をつけよう。」
と紋切り型の話ばかりしていた。
今年も話は変わらないが、父と母は桃子が吉田君と付き合い始めたことに気づいているらしい。バサッと「結婚はまだなのかい?」と切り込んではこないと思ったが、なんとなく両親が聞きたいことを抑えているような含みを持っているような感じがする。
もう少し時が経ったら胸を張って吉田君を紹介しようと思っている。
(つづく)