年末の休暇に涼子はいつもよりは念入りに大掃除をした。

新しい年を明るく迎えたかった。

気になっている汚れをそのままに年を越したくなかった。

そのせいか新年はすっきりとした気持で迎えられた。


去年はイラッとすることが多かったが、大きな出来事もなく、ぎっくり腰くらいで済んでよかったと思う。

もちろんぎっくり腰は辛いけれど。


今年はもっと優しい気持になろう。

簡単なことではないが、もう少し自分のペースでゆったりと物事に対応できるようになりたい。


去年は異常気象とたびたび耳にしたが、季節を五感で感じられるように過ごしたい。


涼子は食べることが好き、甘いものも好きだ。

和菓子なら、1月は花びら餅を食べよう。

ごぼうがうまく煮えていて、うすべにのお餅の間に上品な味噌あんが挟まっている。お菓子にごぼうが入っているなんて不思議な取り合わせだが、何とも言えずおいしい。

宮中の白みそのお雑煮が変化したものらしい。

ごぼうは鮎に見立てているらしい。

花びら餅は1月にしか店頭にない。


子供の頃はごぼうがいやでごぼうを抜いて食べていたが、今はおいしいと感じられるようになった。

年をとっていくことは苦手だったことが大丈夫になることもあるんだなと思う。

わさびがあるとき大丈夫になるように、いやな人もあるとき大丈夫になることがあるのだろうか、それは期待しない。

いやなひとはいやなままで、無理に好きにならなくていい。

ただそのいやなひとに何をしてもいいわけではない。

悔しいときは悔しいと思えばいい。

自分のありのままの心を認めていればいい。


もうすぐ涼子は楽になる、と自分に言い聞かせている。

(つづく)