年が明けて会社の美加の課は慌ただしい日が続いていた。

市場調査のため出張する課員のために資料の準備を手伝ったり、調査の報告書をまとめたりで残業ばかりしていた。


美加のお慕いする常務も忙しそうにしているようだ。

新年の仕事始めに常務が課に来て、みんなに

「今年もがんばってください。」

と挨拶した。みんなで乾杯して仕事が始まった。


常務が身近に来れば来るほど美加は常務にどんどん惹かれていく。

優しくて温厚で包容力のあることがもっとクリアにわかってきている。

一度係長に

「河井常務が怒ったところをみたことありますか?」

と聞いてみたが、

「見たことないなー、あの人は本当に温厚なんだよ。」

と話していた。


会社内では出世しようとする人たちは足の引っ張り合いをしているし、ライバルが業績を上げると面白くないものらしく、厳しい競争が繰り広げられているらしい。

そんな中、温厚で常務になれるのはすごいことなのかもしれない。


常務への思いがますます深くなり、またかなうことのないこの思いに切なさもますます深くなっていく美加だった。


もっとほかのことに気持を紛らわせたい。

(つづく)