12月のある晩、最近付き合い始めた亜依子と武藤さんはついに一晩一緒に過ごした。
武藤さんはそれは大切に亜依子を扱ってくれて、亜依子は深い充溢を覚えた。
とても落ち着いているし、ひとつ山を越えた感じがする。
クリスマスももう若い頃のようにディナーを食べたり、プレゼントの交換もそしてホテルに行くこともしなくてもよかったけれど、天皇誕生日の連休に武藤さんは都内のホテルで食事して部屋も取ってくれて、プレゼントに婚約指輪を買ってくれた。
いままでのクリスマスのなかで最高だった。
そして1月になったが、両家の親にも挨拶することになり、武藤さんから亜依子の家に来て
「結婚したいので、お嬢さんをお嫁にください。」
と亜依子の両親に話してくれた。
亜依子の父と母は
「ありがとうございます。ふつつかな娘ですがどうぞよろしくお願いいたします。」
と快く了承した。
そのあと武藤さんの家に亜依子が挨拶に行ったが、近所に住む伯父も同席していて、
「姪の亜依子のことをよろしくお願いします」
と頭を下げてくれた。
両家が揃って食事会を催すことになり、個室の取れる和食の店に後日かいすることになった。
今月は亜依子にとっては大事な行事が重なって忙しいが、やっときた春であり、幸せな月だった。