桐野夏生『日没』岩波書店刊 2020
恐れ、不穏、迫りくる<表現の不自由>などなど、
息詰まる緊張感が張りつめる。
なのに手に取り、ページをめくる、
それがとまらない。
鋭く問いつづけられるのは、「誰が表現を不自由にしていくのか」、
その「誰」が見えないことの恐怖はただならない。
◆本の紹介はこちら
小説家・マッツ夢井のもとに届いた一通の手紙。
それは「文化文芸倫理向上委員会」と名乗る政府組織からの召喚状だった。
出頭先に向かった彼女は、断崖に建つ海辺の療養所へと収容される。
「社会に適応した小説」を書けと命ずる所長。
終わりの見えない軟禁の悪夢。
「更生」との孤独な闘いの行く末は――。(岩波書店より)
目次
第一章 召 喚
第二章 生 活
第三章 混 乱
第四章 転 向
装幀:鈴木成一デザイン室
装画:大河原愛「深層の森」
「深層の森」、この装画がうつくしく、怖い。
女性の背中、
昏い目をもつ顔にも、
さらに大きな眼がとりかこんでいるようにもみえる
モノトーンの重層的な画。