皆川博子『風配図 WIND ROSE』2023年 河出書房新社刊
第34回 紫式部文学賞受賞の帯に
「12世紀バルト海、自らの道を求め少女は
交易商人を志す――
小説、詩歌、戯曲が溶け合い紡がれる、
皆川博子の新たな代表作」と、青の文字で。
そう、この作品は小説、でありながら
そこに詩歌、戯曲がなめらかに繋がり、
それがさらに人物をきわだたせてゆく。
このような小説に初めて出会った・・・
同時代に皆川作品を読めるこの至福。
そして皆川さん、現在ただいまこの続編『ジンタルス 風配図Ⅱ』を連載中。
<19世紀ウクライナの画家・詩人と
13世紀バルトの騎士の物語が交錯する>長篇、とか。
◆紫式部文学賞 プロフィール
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000771.000012754.html
◆皆川博子さん、受賞をこのように語られて
「十二世紀のバルト海交易、決闘裁判など、
二十一世紀の日本の読者におよそ馴染みのないことを書きました
この作に目をとめていただけたことが、まことに嬉しゅうございます。
私が生まれた昭和初期は、男尊女卑が当然とされていました。
敗戦のとき、私は十五歳でした。
突然、戦勝国から民主主義、男女同権を強制されたのですが、
その本質を理解している大人は周囲にほとんどおらず、
男性優位は続きました。
家長が絶対権力を持つ中で、自力で生きていこうとする十二世紀の少女たちに、
時代を超えて、共感していただけたのでしょか」