諏訪哲史『昏色(くれいろ)の都』2024年 国書刊行会刊
この小説の舞台は、ベルギーの古都ブリュージュ。
全盲で生まれ幼少期に角膜を移植して視力を得た〈わたし〉は26歳。
1995年の秋の来日、再び失明しつつある今、来し方を回想し・・・
その眼裏(まなうら)にブルージュが、
小説や絵画の景が、
そして移植された角膜の記憶が、あざやかに浮かびあがる。
視覚そのものもこの小説では描かれる。
「――低い冬の陽が平原を黄金に透き、
雲と地平、幾百年変わらぬ廃都ブリュージュの翳を紅に焦がし、
日々わたしの眼裏に燃え落ちてゆく――」と、帯。
いまでは珍しい函があり、
表紙絵・扉絵はフェルナン・クノップフ。
初出時の3倍に改稿された耽美的・象徴主義的な表題作「昏色(くれいろ)の都」170枚に、極限地の中洲でただ独り夢現のあわいを行き惑う幻想紀行譚「極光」、零落散逸した古漫画の記憶に遠い幼少期を幻視する瘋狂小説「貸本屋うずら堂」の2編を併録。文体や世界観を全く異にする鏤刻の3編。《夜ごと悪魔の筆が紡がせた》畢生の記念碑的小説集。
――低い冬の陽が平原を黄金に透き、雲と地平、幾百年変わらぬ廃都ブリュージュの翳を紅に焦がし、日々わたしの眼裏に燃え落