董振華(とう・しんか) 句集『静涵(せいかん)』
ふらんす堂 2024年刊
句集『静涵』の静謐でいて、華やかなこと。
兜太先生の筆力のある題 金の箔押し。
この題名、先生から贈られたとのこと。
この句集、俳句に中国語訳が添えられ、
「中国の方々にも読んで頂きたいため」、とのこと。
黄河秋聲その漣のその延々
この景のなんと雄大なこと。
黄河、そこに「秋の聲」配され、
「その」のリフレインが川音となり聞こえてくる。
ひとつの漣から、また、さらにまた、よせてくる漣。
なんと美しい。
春眠深し釈迦の掌かもしれぬ
河骨やわれは痩身草食派
おほかみの咆哮ののちいくさ無し
空蝉の被爆の壁にすがりおる
すでに秋あの日あの時あの日差し
水琴窟寂かに秋とすれちがう
春眠のわたくし鳥になる途中
兜太墓碑閑かな高さ静かに秋思
兜太の忌静かな雨の静かな音
ちちははの豊かな寝息大氷柱
雨音を母の寝息とする晩夏
春の水行くべき先はわが肺腑
天狼に逢うまでわれの彷徨いぬ
董さんは、1972年中国・北京生まれ。
北京の大学の日本語学科を卒業後、中日友好協会に就職。
その後日本の早稲田、慶応、東京農大学へ。
留学中金子兜太より俳句を学ぶ。
句集を4冊刊行され、訳書、編著書も刊行。
「聊楽句会」代表、「海原」同人。
現代俳句協会評議員、日本中国文化交流協会会員。