<「生きている」という重み、「生きてきた」という凄み> 塩田武士『存在のすべて』朝日新聞出版 | 「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

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第四句集『月球儀』
「月球儀」俳句を支柱とした山本 掌の個人誌。

「芭蕉座」は芭蕉「おくのほそ道」を舞台作品とする
うた・語り・作曲・ピアノのユニット。
    



俳句を金子兜太に師事。「海程」同人・現代俳句協会会員。

 

 

 

 

 

 

 

塩田武士『存在のすべてを』朝日新聞出版 2023年刊

 

 

<「生きている」という重み、

 

「生きてきた」という凄み>

 

作者インタビュー、出版のおりの言葉に象徴されて。

 

 

この小説、本の紹介に

 

「平成3年に発生した誘拐事件から30年。
当時警察担当だった新聞記者の門田は、
旧知の刑事の死をきっかけに被害男児の「今」を知る。
異様な展開を辿った事件の真実を求め再取材を重ねた結果、
ある写実画家の存在が浮かび上がる――」と。

 

 

二重誘拐のひとりの子供が<空白の3年>ののち、

 

祖父母の家に。

 

その誘拐のノンフィクションかとまがうほどの

 

警察・犯人・被害者の家族の描写。

 

「写実画」「写実画家」

 

「写実とは」「対象を観る」「それをいかに描くか」など

 

表現者の表現への肉迫はすぐれた絵画論のよう。

 

 

「一瞬のやり取りの中に時間の厚みを感じるエピソード」で、

 

その人物をくっきりと立ち上がらせる。

 

 

いままでも塩田武士作品を読んできましたが、

 

作者の渾身の作品、ではないか、と。