萩原朔太郎「風船乗の夢」、うた(声楽曲)になっています♪ 作曲 石渡日出夫 | 「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

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第四句集『月球儀』
「月球儀」俳句を支柱とした山本 掌の個人誌。

「芭蕉座」は芭蕉「おくのほそ道」を舞台作品とする
うた・語り・作曲・ピアノのユニット。
    



俳句を金子兜太に師事。「海程」同人・現代俳句協会会員。

 

 

 

 

 

 

 

 

ふはりふはりと昇ってゆこうよ

 

この印象的なフレーズがある詩、題は「風船乗の夢」

 

 

作曲家 石渡日出夫が曲を書いています。

 

詩は哲学的で、

 

虚無感のあふれる中間部(ここがとても好き♪)

 

音楽の表情、その振幅も一層激しくなっています。

 

演奏時間7分を越える大曲。

 

 

これを歌ったのは2016年、朔太郎生誕130年記念の年。

 

もう8年前ですか。

 

 

この詩を朗読で上演したのは先月のこと。

 

たいせつな大切な朔太郎作品です。

 

 

 

 

風船乘りの夢

                       萩原朔太郎
                       

夏草のしげる叢(くさむら)から

ふはりふはりと天上さして昇りゆく風船よ

籠には舊暦の暦をのせ

はるか地球の子午線を越えて吹かれ行かうよ。

ばうばうとした虚無の中を

雲はさびしげにながれて行き

草地も見えず 記憶の時計もぜんまいがとまつてしまつた。

どこをめあてに翔けるのだらう!

さうして酒瓶の底は虚しくなり

酔ひどれの見る美麗な幻覺(まぼろし)も消えてしまつた。

しだいに下界の陸地をはなれ

愁ひや雲やに吹きながされて

知覺もおよばぬ眞空圏内にまぎれ行かうよ。

この瓦斯體もてふくらんだ氣球のやうに

ふしぎにさびしい宇宙のはてを

友だちもなく ふはりふはりと昇つて行かうよ。

 

 

                     『定本青猫』