ヴェルディのオペラ「シモン・ボッカネグラ」、
新国立劇場の新制作で11月15日に上演。
NHKプレミアムシアターで観ました。
フィンランド国立歌劇場、テアトロ・レアル(マドリードの王立歌劇場)との共同制作。
もうもう傑出したオペラ!
なんといっても歌手たちが惚れ惚れする歌唱をくりひろげる。
ロベルト・フロンターリ(ジェノヴァの総督シモン・ボッカネグラ)、
イリーナ・ルング(シモンの娘アメーリア)、
ルチアーノ・ガンチ(その恋人ガブリエーレ・アドルノ)、
シモーネ・アルベルギーニ(総督の腹心パオロ・アルビアーニ)、
リッカルド・ザネッラート(アメーリアの祖父ヤコポ・フィエスコ)、
須藤慎吾(パオロの同志)、村上敏明(隊長)、鈴木涼子(侍女)。
シモンのフロンターリ、素晴らしい!
その権力者としての顔、
行方不明のだった娘アメ―リアとの心情あふれる二重唱、
三幕でのザネッラートのフィエスコとの対峙、
そしてその死。
堂々たるヴェルディバリトン。
イリーナ・ルングの陰影のある響きが
シモンの娘アメーリアをくっきりと浮かびあがらせる。
アメ―リアの恋人のアドルノの
ルチアーノ・ガンチの輝かしいイタリアのテノールの声と対象的。
ザネッラートのフィエスコの歌唱・演技の重厚なこと。
この「シモンの政敵」が堂々とした人物であることで
さらにドラマが重層的になった。
シモーネ・アルベルギーニ(パオロ・アルビアーニ)で
総督の腹心であったパオロの裏切がくっきりと描かれる。
それぞれの役が歌唱・演技・容姿も
ぴったりとはまって。
大野和士の指揮する東京フィルハーモニー交響楽団の美しいこと、
思わずハッとするような弦の響き・・・
ピエール・オーディの演出、
アニッシュ・カプーアの舞台美術もみごと。
これだけ複雑な人間関係やそのドラマを
人物の心情に収れんさせて構築してゆく。
カプーアの舞台美術は赤と黒で構成され、
象徴的、抽象的。
ラストシーンの火山、
シモンの死によってあらわれる
巨大な黒い太陽がステージを圧する。
圧巻のオペラ!