野村萬、まさに至芸! 狂言「見物左衛門 深草祭」 @NHK「古典芸能への招待」 | 「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

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第四句集『月球儀』
「月球儀」俳句を支柱とした山本 掌の個人誌。

「芭蕉座」は芭蕉「おくのほそ道」を舞台作品とする
うた・語り・作曲・ピアノのユニット。
    



俳句を金子兜太に師事。「海程」同人・現代俳句協会会員。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見物左衛門 深草祭」

 

野村萬、独演による狂言で、

 

まさに至芸!

 

 

録画をし、それを繰り返し観て、

 

その都度、感に堪えません。

 

 

この「面物左衛門」は野村万蔵家にのみ伝わる独演の狂言とか。

 

公演時92歳の野村萬が一人で演じきる。

 

 

見物左衛門が、都の伏見の藤森神社の深草祭を見物に行く。

 

その祭りの前に、厩、馬、御所を見物。

 

神事が始まると、駆馬、武者揃え、幟を見物する様。

 

その様子を言葉、声、所作で

 

眼前に馬が、御所の掛け軸が、

 

緋縅の鎧武者がたちあらわれる!!?

 

 

相撲が始まると、歳を取っているから前の方に行かせろと、

 

この見物左衛門、かなり身勝手お方(笑)。

 

人混みをたくみに抜けて、土俵際に座り込み、

 

相撲のことをあれこれと注釈。

 

で、「相撲を取れ」と言われて

 

1番目は勝って、つぎには投げ飛ばされてしまう。

 

が、「また、祭りに明年も参ろう」となり終了。

 

 

これをすべて、人間国宝92歳の<野村萬>がひとりで演じる。独り狂言。

 

そこここで笑いがあがり、

 

その笑声はあたたかい。


(まるで極上のコンソメスープのような)。

 

なんという滋味。

 

 

いままでの蓄積された野村萬の<芸>があって、

 

軽妙にして、深いふかい、人間がそこに存在(あ)る。

 

 

野村萬はインタビューで、

 

「その場の空気を通して伝わってゆく<心>がある。

 

身体から身体へ、

 

その場の空気を通してでないと

 

<こころ>まで感じ取ることはむずかしい」と。

 

 

ともにその場に観ることができたなら、と切に。

 

それでも、

 

感動。

 

 素晴しい。

 

まさに至芸!!

 

 

 

 

 

2022年10月 @国立能楽堂の収録