「見物左衛門 深草祭」
野村萬、独演による狂言で、
まさに至芸!
録画をし、それを繰り返し観て、
その都度、感に堪えません。
この「面物左衛門」は野村万蔵家にのみ伝わる独演の狂言とか。
公演時92歳の野村萬が一人で演じきる。
見物左衛門が、都の伏見の藤森神社の深草祭を見物に行く。
その祭りの前に、厩、馬、御所を見物。
神事が始まると、駆馬、武者揃え、幟を見物する様。
その様子を言葉、声、所作で
眼前に馬が、御所の掛け軸が、
緋縅の鎧武者がたちあらわれる!!?
相撲が始まると、歳を取っているから前の方に行かせろと、
この見物左衛門、かなり身勝手お方(笑)。
人混みをたくみに抜けて、土俵際に座り込み、
相撲のことをあれこれと注釈。
で、「相撲を取れ」と言われて
1番目は勝って、つぎには投げ飛ばされてしまう。
が、「また、祭りに明年も参ろう」となり終了。
これをすべて、人間国宝92歳の<野村萬>がひとりで演じる。独り狂言。
そこここで笑いがあがり、
その笑声はあたたかい。
(まるで極上のコンソメスープのような)。
なんという滋味。
いままでの蓄積された野村萬の<芸>があって、
軽妙にして、深いふかい、人間がそこに存在(あ)る。
野村萬はインタビューで、
「その場の空気を通して伝わってゆく<心>がある。
身体から身体へ、
その場の空気を通してでないと
<こころ>まで感じ取ることはむずかしい」と。
ともにその場に観ることができたなら、と切に。
それでも、
感動。
素晴しい。
まさに至芸!!
2022年10月 @国立能楽堂の収録