作家・皆川博子のオリジナルな著作は
1972年の『海と十字架』から2020年の今年まで
百冊を超えるそうですが、
小説以外はこの3冊のみ。
『摂 美術、舞台そして明日』
『辺境図書館』
『彗星図書館』
おりおりに書かれたエッセイを
「雑文だから」「恥ずかしいから」と
いままで本にはしなかった由。
そのエッセイ94篇を日下三蔵編でまとめたのが
この著作『皆川博子随筆精華 書物の森を旅して』。
帯にあるよう「敬愛する作家、魅了された小説、
お気に入りの芝居や絵画、
海外取材記、
そして、創作への想い」。
いままで触れることのなかった
皆川博子の別の面をみることができました♪
第一部 幻の処女作
幕間 私のヒーローとヒロイン
第二部 かぶき事始
幕間 美少年十選
第三部 暗合の旅
幕間 マイベスト
第四部 物語を発見していく旅
このなかで「美少年十選」にことのほか惹かれました。
新聞連載10回。
新聞ですので、美術作品の図版と短い文章ですが、
その絵画の深奥を詩、短歌や俳句をひき、
うつくしい言の葉で、
端麗に、怜悧に、縫い留め、
まるで散文詩を読むよう。
そしてこの造本の瀟洒で美しいこと。
墨絵を彩ったような装画・挿画、
章立てに使われるほのかにくずした書体、
装幀は柳川貴代
装画は新倉章子
どうぞ、お手に取って、ご覧ください。
今年は皆川博子作品、刊行がたくさんありました。
いままで絶版になっていた長編推理小説をまとめた
『皆川博子長編推理コレクション』
1冊に2編の長編がおさめられ、これが4巻。
単行本『写楽』が再版され文庫に。
もとは映画「写楽」のシナリオでこちらが先行し、
小説は映画が撮影されている時に書かれた、とか。
この映画「写楽」は篠田監督、フランキー堺主演、
リアルタイムで観ています♪
同時代で皆川博子作品を
読むことのできる豊穣さ、
嬉しさはなによりの至福です。