朔太郎の<五月>。
「干からびた犯罪」、
この詩も『月に吠える』にあります。
「殺人事件」に出てきた<探偵>が
ここでも登場。
探偵は「おもいにしづん」でいます。
詩集『月に吠える』 挿画:田中恭吉
干からびた犯罪
どこから犯人は逃走した?
ああ、いく年もいくねんもまへから、
ここに倒れた椅子がある、
ここに凶器がある、
ここに屍体がある、
ここに血がある、
そうして靑ざめた五月の高窓にも、
おもひにしづんだ探偵のくらい顔と、
さびしい女の髪の毛とがふるへて居る。
この詩、石桁真礼生が作曲しています。
“交響曲萩原朔太郎”を
書きたいと熱望した石桁。
その思いは
「低声と室内楽曲のための〝月に吠える〟」に結実。
なんと今日(こんにち)までに
2度上演されただけの超難曲。
低声(バリトンかアルト)、クラリネット、ヴァイオリン、チェロ、
ピアノ、ティンパニーの編成。
詩は「悲しい月夜」「山居」
「殺人事件」「干からびた犯罪」。