塚本邦雄『青き菊の主題』 本の紹介 | 「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

第四句集『月球儀』
「月球儀」俳句を支柱とした山本 掌の個人誌。

「芭蕉座」は芭蕉「おくのほそ道」を舞台作品とする
うた・語り・作曲・ピアノのユニット。
    



俳句を金子兜太に師事。「海程」同人・現代俳句協会会員。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

青い菊からこの本へ。

昭和46年から1年間の短歌と

そこから掌編小説からなる瀟洒な本。

装幀は盟友・政田岑生。



1ページに一首。

青の縁取りが短歌をかざる。

 

昭和46年刊。

 

人文書院。

 




  目次はこのよう。

 
桃夭楽
 桃夭楽 頭韻鎖歌三十五首 

空中伽藍

水中斜塔図
 柩
 反射祷
 水中斜塔
 聖母風信

青き菊の主題
 蜜月
 天使

火宅揺籃歌

網膜遊行 あるひは反・帰去来辞

雄蘂変
 I 蘂・アササン
 II 蘂・イカロス
 III 蘂・カエサル
 
跋 重陽転

 

 

 

 

 

 

 


 
 

この歌集の短歌をいくつか。()はルビ。


萬象の中なる僕(しもべ)わがために菊青きさきの生(よ)をたまふべし

青き菊の主題をおきて待つわれにかへり来よ海の底まで秋

酸し月のひかり一生(ひとよ)をさかしまに雉子藍青(らんじやう)の身をつるされつ
 
血は水よりも淡きうつつにかなかなの声す死にかはりても少年

狂ひつつしづけきこころ迷宮の耳に夏鴬の屍(し)沈め

百合科病院、天南星(てんなんしやう)科医師、茄子科看護婦、六腑夜ひらくてふ

藝文のしづかに狂ふ 肉の香の熟瓜(ほぞち)両断して露の夏

イエスは架(かか)りわれはうちふす死のきはを天青金(あをかね)に桃咲きみてり

鈍色に煮ゆるあはびの夕がれひ神は微風のごとよぎるなり

男郎花(をとこへし)白きほむらの一かかへ神のにくしみをかたじけなうす

ねむりこそ死への間道曇日(どんじつ)の穂麦穂のすゑよりあかねさす

流罪ひととき還れば恋ふるよその秋の夢の伽藍に繭は満ちたり

告げざりし行方来し方漆黒のしづくとなりて夜のつばくらめ

すでにして詩歌黄昏(わうこん)くれなゐのかりがねぞわがこころをわたる

火に投げし桔梗の縹(はなだ)一瞬に攣(つ)れつつ告げむここまでは愛

神はおくれて臨みたまふを寝台に父蜜月のさかさばりつけ