えいさらえい熊野湯の峰桜騒 掌
◆安部完市
安部完市・俳句講座を2年ほど受講していた。
月に一回、3時間の講座で、
句会を中心に講義で10名いたか、どうかの
非常に時間もゆたりと内容も充実して。
ある時「地名」の兼題が出て、この句を提出。
安部先生が博覧強記なことはむろんのこと、
「道行」などの著作もある。
この中世説話「小栗」についてもとりあげていたような。
で、
驚いたのはこの句を見ると
すぐ日本地図をささっと黒板に書き、
がきあみ
小栗が毒酒で餓鬼阿弥となり、
その身を熊野湯の峰まで車に引かれて行く、
この道筋をじつに克明にたどり、
詳細な解説がつづいた。
阿部先生というとこのことが
思い出されるほど印象がくっきり、と。
この句評は覚えていないのですが(笑)
◆
「えーいさらえーい」、
「えいさらえい」は車を引く掛け声。
ひとひ せんぞうくよう
「一引き引いたは千僧供養
ふたひ まんぞうくよう
二引き引いたは万僧供養」
安部完市 画像は現代俳句協会より
昭和3年(1928)1月25日東京生まれ。
平成21年(2009)2月19日没。精神科医。
• 昭和25年より俳句を始め、昭和26年日野草城の「青玄」、
同27年、西村白雲郷、稲葉 直の「未完現実」に入会。
• 昭和37年、金子兜太の「海程」に入会、同人となる。
その後、高柳重信の「俳句研究」編集に協力。
• 昭和45年、第17回現代俳句協会賞を受賞。
• 平成12年、埼玉文化賞を受賞。
• 平成21年2月1日現代俳句大賞受賞。
• 平成21年2月19日逝去。享年81歳。
• 現代俳句協会副会長(平成9年2月~平成21年1月)、
国際俳句交流協会副会長、日本ペンクラブ会員。
<著書>
句集
『無帽』
『絵本の空』
『にもつは絵馬』
『春日朝歌(はるひあさうた)』
『純白諸事』
『軽(かる)のやまめ』
『地動説』
『阿部完市俳句集成』等。
評論集
『俳句幻形』
『俳句心景』
『絶対本質の俳句論』等。