ベートーヴェンの華々しい「歓喜の歌」を一枚の絵に描いてみるがよい。
想像力を存分に駆け巡らせながら、
人々が感動の戦慄を覚え、地面にひれ伏すのを凝視するがよい。
そうすれば、ディオニソスの陶酔に触れることができるだろう。
そのとき、奴隷は自由の身となる。
そして、人々の間に作られてきた、
堅牢で敵意あふれる障壁はすべて打ち砕かれるのだ。
今や人々は、宇宙的調和の教えによって結合し、
和解し、融合していると感じるばかりではない。
同胞と自分自身を平等の立場で観るようにさえなってきている。
まるで世俗の鎖から解き放たれるかのように……。
まるで神秘の源に見えるものは、
もはやちぎれた鎖の輪とでも言うかのように……。
(ニーチェ「悲劇の誕生」より)
パーカッションにのせた
ジル・ロマンのこの朗読から始る。
ベジャール振り付け、ベートーヴェンの第九交響曲。
2014年11月にNHKホールで上演、
その後上海での公演。
先日BS NHKで放映された。
東京バレエ団50周年、
作品ができてから50年、となる。、
ベジャールバレエ団、
オーケストラ、合唱、ソリスト、ダンサー
出演者は350人を越える。
ズービン・メータ指揮、イスラエル交響楽団。
オーケストラはピットでなく、
舞台後方におかれ、合唱は左右に。
魔法陣を描いた前方のステージで踊られる。
音楽を知り尽くした感のベジャール振り付け、
男性ダンサーはタイツ、
女性ダンサーはレオタードとヘアーバンドの
シンプルな衣装で各楽章で色が変わる。
いっそうダンサーの身体が耀く。
その汗の美しいこと。
世界を構成する4大元素、地、火、水、風を象徴する舞踊に
各楽章が対応されて。
第1楽章では東京バレエ団の躍動感あふれる群舞、
ソリストは柄本弾(つかもと・だん)と上野水香の踊り。
第2楽章は、ベジャール・バレエ団のキャサリーン・ティエルヘルム&大貫真幹。
第3楽章はエリザベット・ロスとジュリアン・ファブローによる
しずかなしっとりした踊り。
第4楽章で、多彩な踊りが音楽とともに高揚し、
多国籍のダンサー全員が踊る、
圧倒的なフィナーレへ高まってゆく
まさに<友よ>であり、<歓喜の歌>。
あらたな「第九」を観た。
ゲネプロ
https://www.youtube.com/watch?v=tE3XLzbNPvI#t=69
◇モーリス・ベジャール振付
ベートーベン「第九交響曲」
<曲 目>
音楽:ベートーベン作曲
交響曲 第9番 ニ短調 作品125
<振 付>モーリス・ベジャール
<振付指導>ピョートル・ナルデリ
<総合演出>ジル・ロマン
<出 演>
東京バレエ団
モーリス・ベジャール・バレエ団
ソプラノ: クリスティン・ルイス
メゾ・ソプラノ: 藤村 実穂子
テノール: 福井 敬
バス: アレクサンダー・ヴィノグラードフ
<合 唱>栗友会合唱団
<合唱指揮>栗山 文昭
<管弦楽>イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団
<指 揮>ズービン・メータ
<ニーチェ「悲劇の誕生」翻訳>増田ユリ子
収録:2014年11月9日 NHKホール